杉谷拳士、増田大輝、周東佑京...秦真司が語る「便利屋」の生きる道 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 チームでも上位ランクに位置する武器をひとつでも持っていれば「スペシャリティ」。そこに、もうひとつ持ち味が加われば「ユーティリティ」となり、バッティングを評価されればレギュラーをつかめる。周東はこのようなステップアップをしっかり果たし、自分の立ち位置を確立したことになります。

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 レギュラーへの最重要課題と目される打撃面で力を示した選手に、プロ6年目で初めて規定打席に到達したソフトバンクの栗原と巨人の大城がいる。ふたりは捕手が本業でありながら、ほかのポジションも併用して守ることでレギュラーへの活路を見出した。秦も自身の経験から、「チームの意向に従い、チャンスを掴むことが大事」と伝える。

 まず、ふたりが主力になれた要因として、チーム事情が挙げられます。

 私がジャイアンツのバッテリーコーチだった昨年から、チームとして「攻撃陣を強化したい」という方針が明確でした。そこで、バッティングのいい大城は、キャッチャーの62試合に迫る46試合にファーストで出場。バッターとして試合に出ることと同時進行で、バッテリーコーチだった私は、構えからキャッチング、ブロッキング、スローイングなど、キャッチャーの基本から徹底的に鍛えさせました。

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 今年、キャッチャーにケガ人が出たとはいえ、ほとんどをキャッチャーのレギュラーとして出場できたということは、練習の成果が出たのだとうれしく思います。

 栗原の場合、甲斐(拓也)という球界を代表する絶対的なキャッチャーがレギュラーに君臨していることが大きい。栗原もバッティングがよく、さらには、若手とベテランの世代交代も囁かれている時期でもあった。攻撃に厚みをもたらしたいと考えていたソフトバンクとしても、他のポジションでの起用を決断したのでしょう。結果的にその采配が、チームに恩恵をもたらしました。

 もしかしたら、栗原のケースはコンバートに近い位置づけなのかもしれません。というのも、境遇が私と似ているからです。

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