32歳、澤村拓一が意外な人気のワケ。コロナ禍で気になる日本人のMLB移籍 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 契約面だけを見ても、選手にとってマイナスは多い。長谷川氏が説明する。

「該当選手がフリーエージェントになった時、いくらのバリューがあるかというところからメジャーの球団は値付けをスタートします。たとえば、この選手には3年15億円の価値があると思ったら、15億円という予算のなかからポスティングの入札費を10億円か、8億円にするかなどと考えていく。そこは周囲との駆け引きです」

 ポスティングで移籍した場合、選手は契約金総額が"目減り"すると考えればわかりやすいだろう。

 たとえば、2006年に松坂が西武からレッドソックスにポスティングで移籍した際、入札金額は5111万1111ドル11セント(約60億1000万円)で、総額5200万ドルの6年契約(約61億円)が結ばれた。つまり松坂の価値は6年120億円ほどで、その半分が西武への譲渡金に回された。同時期にFAで移籍していたら、松坂はもっと好条件を得られたはずだ。

 NPB球団の立場からすると、2013年に行なわれたポスティングのルール改正はマイナスに働いた。譲渡金に2000万ドル(約22億円)の上限が設けられ、松坂が移籍した時のような大金を得られなくなったからだ。

 さらに2018年から新ルールが適用され、選手の契約金に対して球団への譲渡金が発生する「譲渡金変動制」に変わった。契約金、年俸、バイアウト (契約解除)額の総額を「トータル・ギャランティー・バリュー」とし、メジャー契約の場合は以下の計算で譲渡金が決定される。

(1)総額の2500万ドルまでの部分に20%をかけた額
(2)総額の2500万〜5000万ドルの部分に17.5%をかけた額
(3)総額の5000万ドル以上の部分に15%をかけた額
(4)出来高に15%をかけた額
譲渡金=(1)+(2)+(3)+(4)

 バイアウトなど日本では馴染みのない言葉もあってわかりにくいかもしれないが、簡潔に言えば、以下のように変化した。

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