大久保博元と川崎憲次郎で意見の相違。セ・リーグはDH制を導入すべきか (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 一方、現役時代をヤクルト、中日ですごし、ロッテでコーチ経験がある川崎憲次郎氏は"投手視点"でこう語る。

「パ・リーグには柳田悠岐(ソフトバンク)や吉田正尚(オリックス)、森友哉(西武)のように、ぶん回して打率を残し、ホームランも打てるバッターが増えてきています。それに負けじと、パワーピッチャーも多いですよね」

 2ボール1ストライクと投手不利のカウントになった時、どの球種を投げるか。その選択をする上での基本的な考え方が、両リーグで異なると川崎氏は続ける。

「パ・リーグはカウント2-1から真っすぐを投げ、抑えていく力が求められます。対して、セ・リーグで必要とされるのはコントロール。2-1から変化球でストライクをとり、2-2になったら落ちるボールを低めに正確に投げる。力任せにど真ん中で空振りを取れるピッチャーはなかなかいない分、そういうところで勝負しないといけない。同じことがバッターにも言えます。低めの変化球をどう見逃し、どうやって拾うか。甘い1球を見逃さないことも求められます」

 投手と打者は18.44メートルの距離で対峙し、しのぎを削りながらともに成長していく。そう考えると、セ・パで野球のスタイルが異なるのは合点がいく話だ。

 投手が"9人目の打者"として打席に立つセ・リーグと、打撃に専念する"強打者"がDHで起用されるパ・リーグ。両者の成績を比べると、打力の違いは一目瞭然だ。

 2020年シーズン、セ・リーグで10打席以上立った投手は49人。彼らの成績を合わせると、 1157打数128安打で打率.111、2本塁打だった(「プロ野球データFreak」より筆者計算)。

 対して同年のパ・リーグで、主に指名打者として出場した打者の成績は以下になる。

 バレンティン(ソフトバンク)191打数32安打、打率.168、9本塁打
 角中勝也(ロッテ)217打数53安打、打率.244、2本塁打
 栗山巧(西武)372打数101安打、打率.272、12本塁打
 ロメロ(楽天)356打数97安打、打率.272、24本塁打
 中田翔(日本ハム)440打数105安打、打率.239、31本塁打
 ジョーンズ(オリックス)302打数78安打、打率.258、12本塁打

 上記6選手は守備に就いた試合もあり、大雑把な比較になる。それでも「投手」と「DHで起用される打者」を比べる意味では、十分な材料になるだろう。

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