「巨人に指名されても育たない」からの脱却。ドラフト19人指名の本気度 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 そしてドラフトだ。

 支配下ドラフトで亜細亜大の右腕・平内龍太をはじめ、大学生中心に7人を指名。さらに育成ドラフトでも12人を指名した。ドラフトで指名するということは、つまり「獲って、育てます!」という宣言である。しかも、今年は育成ドラフトに阿部慎之助二軍監督が同席したという。育て甲斐のある選手を阿部二軍監督がピックアップした可能性もある。

 そもそも巨人は、それまではあえてチームの方針をわかりにくくしておくことで"球界の盟主"としての威厳を保っているように見えた。それが今回のドラフトでは"育成"という二文字がはっきりと表れていた。

 あるアマチュアの指導者はこんなことを言っていた。

「以前は(巨人に)指名されても育たないんじゃないか、試合に出られないんじゃないかという声はありましたが、最近は育成に力を入れているのがすごくわかります。下位指名や育成出身の選手が一軍でプレーしているのを見ると、モチベーションは上がりますし、本当の意味での競争になる。チームとしてすごくいい環境だなと思いますね」

◆藤原、根尾を子ども扱いしていた高校時代の戸郷翔征>>

 育成ドラフト1位で指名された岡本大翔(米子東)、同3位の笠島尚樹(敦賀気比)は当初、進学の可能性が高かったそうだが、交渉の際に育成システムについての話を聞き、入団を決断したという。"育成"という点において、今の巨人には選手たちにも伝わるしっかりとしたビジョンが描けているのだろう。

 とはいえ、本当の勝負はこれからである。巨人の大塚淳弘球団副代表は「今年は発掘と育成の元年。3、4年後のドラフト1位を獲れた」と語っていたが、はたして指名した19人のうち何人の選手が一軍の戦力となることができるのか。

 トレードやFAで獲得した大物選手も華やかでいいが、ファームから台頭してきた若い選手の活躍はファンにとってたまらないものである。

 育てながら勝つ──本当の意味での「育成の巨人」が完成した時、とんでもなくすごいチームになっていくのではないだろうか。これからの巨人が楽しみでならない。

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