DeNAがオースティンを獲得した手法「ブレンディング」とは何か? (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Koike Yoshihiro

 ただ来日前、オースティンは右投手や変化球の対応に難があると言われていたが、そういった不安要素が飛び交うなか、球団としてどこまでの可能性を見出していたのだろうか。

「正直、オースティンに関しては、あまりネガティブなものは感じていませんでした。表面的なスタッツだけを見れば、たしかに巷で言われているとおりかもしれません。ただ、スカウトのロペスは広角に打てる技術があるし、選球眼も優れていると言う。

 ではなぜ、メジャーで数字が悪かったといえば、彼はレギュラーとして毎試合出場する選手ではなく、おもに代打として一線級の投手と対峙せざるを得ない立場でした。そのような状況で目を見張るような数字を残すのは難しい。ただ、ロペスは3Aでフル出場する彼を見て評価を下しています。事実、オースティンを数試合見た進藤さんは、スイングスピードは速いし、ボールの見極めができている。日本の野球に対応できるだろうと判断しました」

 さらにITを活用したデータ分析を担うR&Dグループを持つチーム戦略部ならではの評価も獲得への後押しとなった。

「2016年から3Aのトラックマンデータなどを入手できるようになり、アナリティクスの分野においても分析が進んでいます。打球速度や強い打球の比率、どの方向へ飛ばすかすべてわかり、表面的なスタッツだけではない部分も分析可能になりました。とくにオースティンの場合はそのあたりの数字がメジャーでもトップクラスだったので、これはいけるのではないかと判断しました」

 昔ながらのスカウトの眼力とアナリティクス。このふたつがDeNAの外国人選手獲得のカギとなっている。

「これを我々は"ブレンディング"と呼んでいます。まずはスカウトの目線を優先し、アナリティクスを融合させる」

 また、オースティンはハングリー精神も旺盛だ。キャンプの時、本人に「過去の栄光やプライドを捨てなければ、日本で成功するのは難しいと言われているが?」と尋ねると、「過去のことは関係ない。今ある状況を受け入れ、自分のやれることを精一杯やるだけ。日本の野球をしっかりと学びたい」と答えてくれた。

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