西武・鈴木将平が異端児だった高校時代。進学校で唯一「就職希望」だった (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 しかし、何度か見に行ったファームの試合で、ネクストバッターズサークルで集中できず、打ち損じたことに苛立ち、感情的になるシーンを見た。

 そんな鈴木の姿に、ある選手が重なった。

 仙台育英時代に飛び抜けた身体能力を発揮し、2008年にドラフト4位で巨人に進んだ橋本到だ。

 高卒1年目からファームとはいえ3割近い成績を残し、その後も毎年コンストラントに結果を残してきた。それでも一軍の戦力状況とタイミングが合わず、持てる才能を発揮できないまま2018年オフに楽天にトレードとなり、昨年限りでユニフォームを脱いだ。

 結局、一軍で試合に出るためには実力はもちろんだが、運も必要になる。いくら二軍で活躍しても、一軍に空きがなければ上がれない。だから鈴木も、橋本の二の舞にならなければ......と思っていたら、昨年あたりから西武外野陣に動きが出てきた。

 栗山がほぼ"DH専属"となり、外崎も内野での出場が増え、極めつけは秋山のメジャー移籍だ。その代わりとしてコーリー・スパンジェンバーグを新戦力として獲得したが、7月に入ると昨季盗塁王の金子がケガにより戦線離脱。ようやく鈴木にスタメン出場のチャンスが回ってきた。

 すると、持ち前の技術を生かしたバッティングで結果を残し、7月10日からは"不動の1番"として活躍。7月27日現在、打率.307と奮闘している。

 正直、鈴木の登場はギリギリだったのではないかと思う。彼のような"天才肌"は、自分に結論を出すのが早い。圧倒的にプロの壁にぶち当たったならまだしも、1年目から結果を残し、順調に実績を積んでも一軍からお呼びがかからない。「自分に足りないものはなにか......」を考えても浮かばず、やがて自分のプレースタイルを失う選手を何人も見てきた。

 だからこそ、鈴木には待ちに待った舞台で大暴れしてほしいと願う。

 プロで10年「1番を打てる選手」──高校時代の鈴木について、そう記事で書いたことがあったが、その見立ては今も変わっていない。鈴木の才能がようやく大きく花開こうとしている。

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