2020.07.28

西武・鈴木将平が異端児だった高校時代。
進学校で唯一「就職希望」だった

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

異色の球歴の西武・川越誠司の記事はこちら>>

 西武・鈴木将平が静岡高の3年だった5月、ある雑誌の企画でインタビューを行なった。学校の教室を借りて話を聞いていると、窓の外から野球部員がアップする様子が見えてきた。その時点ですでに鈴木の心はグラウンドに向かっていたが、バッティング練習が始まってしまったらもうダメだ。

「あの……もういいですか、グラウンドに行っても。自分、バッティング練習しなきゃいけないんで!」

 そう言い放つと、こちらが返事をする前に、あっという間に教室を飛び出していった。

現在、西武の1番としてブレイク中の鈴木将平 もともとインタビューされること自体あまり得意ではなさそうな感じで、質問に対しても淡々と語るだけだったが、ひとつだけ強烈に印象に残った話がある。

「ここに野球をしに来ているヤツはたくさんいますけど、本気でここから直でプロに行こうと決めているのは自分だけだと思います。静高(しずこう)は県内で1、2の進学校ですけど、そのなかで自分は、間違いなくただひとりの”就職希望者”だと思います」

 口数は少なかったが、発せられる言葉の一つひとつが決然としていた。こちらの話に合わせたり、愛想笑いしたりすることもない。いい意味で高校生離れしていた。

「野球の虫」「野球小僧」……鈴木を評する言葉はいろいろあったが、誰もが口を揃えるのは「アイツほど野球のことを考えているヤツはいない」ということだ。

 そんな鈴木のプレーを初めて見た時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。入学間もない5月。1学年上の堀内謙伍(現・楽天)や安本竜二(現・JX−ENEOS)が見たくて春の県大会に行ったのだが、誰よりも目立っていたのが1番を打つ左打者の鈴木だった。メンバー表を見ると入ったばかりの1年生だと知り、なおさら驚いた。

 右のサイドハンド投手のファーストストライクを迷いなくフルスイングすると、一塁手も二塁手も一歩も動けないほどの強烈な打球がライトへ前に弾き返された。スイングスピードの速さはもちろんだが、トップからインパクトへと移行するときの瞬発力はモノが違っていた。鈴木のあとを打つ堀内や安本のスイングのほうが遅く見えたほどだ。