ありえない軌道で変化した「幻のナックルボーラー」三浦清弘の魔球 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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 再び手にしたボールの縫い目に爪が立てられ、そこに視線が落とされている。「近鉄の西本幸雄さんの話もあるでしょ?」と、取材に同席していた西嘉(にし よし)氏が尋ねた。

「あぁ、はっは。あれは日生球場か。当時はサードコーチに監督が出とった。で、僕が持ったら、ナックルの握りが見えるんですよね。それで投げようとしたときに、西本さんが『おいっ、ナックルやぞー!』ってバッターに大きな声で言うわけ。でも、オレ、言われても何ともないから。次、ほうるとき、西本さんに『いきますよ』って握りを見せた。それでも打たれんかった」

「じゃあ、三浦さんのナックル、バッターに1回も打たれたことないんですか?」

「あるよ。1回......いや2回ある。1回はオープン戦で、ヤクルトの、名も知れんような外人ですわ。無茶振りするヤツ。バッとほったら、ビャーッと振って、たまたま当たったんやろね。ホームラン。そう、外人いえばね、ロッテにアルトマンっておったでしょ? 大リーグから来た、すごいバッター。あれにようほっとって、空振り三振を取ったよ。

 ほんで『日本に三浦っちゅうピッチャーがおって、ナックルがすごい。アメリカに連れて帰りたい』ってラジオで言うてたらしい。『そのかわり、ナックル以外は打たれるから、ほうらさんでいい』と。ははっ」

 西氏のおかげで図らずも、三浦さんのナックルに対する客観的な評価がわかった。「ナックル以外は投げなくてもいい」というアルトマンの言葉を真に受ければ、すなわち「ナックルボーラーとしてメジャーで通用した」と言い換えることもできそうだが......。

「それと、打たれたんは張本(勲)。あれね、最初ほったら空振りしよった。そしたらワシに向かってね、あいつが片目つぶるわけ。で、人差し指をこうして自分のほうに曲げて、もう1球ほうってくれって。ほんで、ほうったら、ショートの上にポーンとヒットを打たれた。あれ、黙ーってほうっとったら、合わせにこれないわね」

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