2020.05.09

田中将大が叫んだ「伝説の8球」。
楽天を初優勝に導く最高のアウトロー

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 では、スイングとしてはどんな意識だったのか。

「大振りもダメだなと思いながら、コンパクトに振ってもファウルになると思ったので、力強く振ろうと思いました。あんなにスピードもあるし、コントロールもあるし、中途半端なバッティングだけはしないでおこうと」

 当時22歳、高卒5年目の浅村は史上最年少タイで100打点を記録し、最終的に110打点で打点王のタイトルを獲得した。フルスイングを持ち味とする一方、ときにコンパクトなスイングに切り替えるうまさも身につけ、リーグ5位の打率.317を残している。そんな器用さも併せ持つ打者が、結果的に"中途半端なスイング"で仕留められたのはなぜか。

 初球、田中が外角高めに151キロの速球を投げ込むと、浅村は思い切り振って空振り。完璧なコースだった。続く152キロのストレートが外角低めにわずかに外れると、3球目は152キロのストレートが外角高めにストライク。浅村は手を出せずに追い込まれた。4球目、田中は再び外角に150キロストレートで勝負にいくが、これが低めに外れる。

 そして勝負を決する5球目。口を真一文字に結んだ田中は外角低め、これ以上ないコースにこの日最速となる153キロの豪速球を投げ込んだ。最後もストレートを待っていた浅村だが、先述したように始動が遅れ、及び腰となったようなスイングで空振り三振に仕留められた。