元ホークス吉村裕基はオランダ→沖縄へ。NPB131本塁打の男が選んだ道 (3ページ目)

  • 広尾晃●文 text by Hiroo Koh
  • photo by Hiroo Koh

 その口ぶりからは、「オレだって考えているんだ」という思いが伝わってくる。キャリアを重ねるうちに、そうした思いが鬱積していったのだろう。

「横浜でも、田代(富雄)コーチはポイントを絞ってアドバイスしてくださったので、とてもわかりやすかった。あと、バッティング練習の時にゲージに寄りかかって見られるのって、すごくプレッシャーなんですよ。僕のことなど見ていないのかもしれないですけど、気になって仕方なかったです(笑)」

 2012年オフ、吉村はトレードで福岡ソフトバンクホークスに移籍する。監督は、小さい頃から憧れていた秋山幸二だった。

「秋山さんは西武からダイエー(現・ソフトバンク)に来られて、40歳近くになってもバリバリプレーされていた。体も大きいし、昔はメジャーに一番近い選手と言われていて......。監督になられてから接しましたが、余計なことはおっしゃらず、的確に指導していただきました」

 その後もソフトバンクの一員としてプレーしたが、2018年のシーズンオフに戦力外通告を受ける。34歳の時だった。

「すごい選手がいるなかで、日本を代表する打者になりたいと思ったけど、なれなかった。もっとやれるという思いで、現状に満足することなくやってきたのですが......でも、責任は自分にあるので」

 戦力外となった吉村は、福岡・筑後で行なわれた12球団合同トライアウトに参加した。

「わずかなチャンスですから......打つ、打たないもあるけど、『体は元気だぞ!』というのを、キャッチボールの時からとにかくアピールしました。走れるし、スイングもできるし、どこも悪いところはなかったですから。でも、結果がダメなら仕方ないと思って......覚悟はしていました」

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