ロッテ種市篤暉が「欠点を見抜かれた」場所。悩み続け光が見えた5日間 (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 種市は室内に設置されたマウンドでシャドーピッチングを繰り返した。そして、この合宿で初対面を果たしたソフトボールの上野由岐子からも金言を授かった。

「自分のやりたいことが一番じゃないよ。いま教わっていることを、自分のやりたいことに加えようとするから難しくなる。素直に、教えてもらったことを最優先するのが大切じゃないかな」

 種市の顔に笑顔が戻ったのは合宿4日目だった。マウンドに立って投球を繰り返す。右手の位置も左肩の開きも、それまでとは明らかに違っていた。

「やっとスタートラインに立てた気がします」

 その夜、千賀に「(フォームへの意識が)まだ全然足りない」とダメ出しされていたが、泣きそうな表情になることはなかった。

 もうすぐ2月になる。ロッテの沖縄・石垣島キャンプはドラフト1位ルーキーの佐々木朗希フィーバーが巻き起こることは必至だが、一方で注目されるのが開幕投手争いだ。井口資仁監督は報道陣に対して白紙を強調しており、石川歩やFA加入の美馬学に加えて、若い二木康太、そして種市が候補に挙がってくる。

 パ・リーグのシーズン開幕は3月20日。ロッテは福岡PayPayドームでソフトバンクと激突する。そのソフトバンクの開幕投手は、よほどのことがない限り千賀で揺るがない。はたして、師匠との投げ合いは実現するのか。

 恥ずかしがり屋で大きなことは言わない東北人気質そのままの種市だが、その夢を胸のなかにしまって、まずはキャンプに臨む。

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