恩師が語る村上宗隆のターニングポイント。「甲子園に出て変わった」 (2ページ目)

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 ちなみに、1年目の村上はファームで98試合に出場し、打率.288(イースタン3位)、17本塁打(同2位)、70打点(同2位)、出塁率.389(同1位)の好成績を残した。そして9月16日の広島戦で初めて一軍昇格を果たすと、史上7人目となる高卒ルーキーの初打席初本塁打の衝撃デビューを飾った。

「1年目を見る限り、最初の出だしさえ間違わなければ、2年目は7080試合は出られるだろうと思っていましたが、まさかフル出場とは......。仮にフル出場したとしても本塁打は15から20本ぐらい打てれば御の字だと思っていたし、多く見積もっても25本塁打、60打点でした。それをいともあっさりクリアしたんだから、できすぎですよ」

 二軍の1日は、朝から球場に行って練習をし、昼から試合をこなして、夕方に終わる。これは学生の生活習慣とほとんど同じで、そのことに関しては坂井監督も心配していなかったという。だが、一軍に上がれば、昼頃まで睡眠をとり、夜に試合をするというリズムに変わってくる。まずはそのリズムに体を慣らす必要があるため、一軍に定着したばかりの頃はそれなりに苦労を強いられるだろうと、坂井は考えていた。しかし、それは杞憂に終わった。それどころか、入団2年目にしてチームを代表する選手となった。

「彼を送り出す時にこう言ったんです。『ホームランバッターを目指すんじゃなく、打点を稼げる選手になれよ。おまえが一番チームに貢献できるのはそこだと思うよ。そうすればホームランも自然とついてくるから』と。打率はいいんです。それに三振が多いと言われていますが、三振も凡打も一緒でしょ。大事なのは、どれだけいい場面で打てるか、ランナーを還せるかだと思います。もちろん、96打点という結果は、村上の前を打つ選手がチャンスをつくってくれたからで、そこは本人も感謝しているところだと思います。

 守備ですか? たしかに、たくさん失策を重ねましたし、解説者の方も『守備はまだまだ』と言います。そりゃ、ほかの選手と比べても未熟なところはたくさんあると思います。ただ、高校時代にキャッチャーをやっていた選手が全然違うポジションをやって、ああいう緊張感のなかでプロの打球に対処しなきゃいけないわけです。甘いと言われるかもしれませんが、私は十分に評価していいんじゃないかと思います。チームには申し訳ないと思いますけどね(笑)」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る