鬼コーチ・宮本慎也の心残り。「1人前にできなかった選手がいる」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

── チーム早出練習は若い選手たちの土台づくりで、最終的には自主性を身につけてほしいということでしょうか。

「それが理想ですよね。ただ若いうちは、ある程度の強制は必要だと思います。少し前に"個性"という言葉が流行りましたが、何事も基本があっての個性だと思います。チーム早出に強制だから来るのか、自分のなかで『今日はこれを試してみよう』と思ってくるのか......僕はそれだけでも自主性だと思うんですよ。監督やコーチは変わっていきますが、選手たちのやることは変わらないわけです。僕たちがいなくなっても、それは続けてほしい。プロ野球は結果の世界です。よければレギュラーとして続けられるし、一瞬の油断が命取りになる。ダメならすぐにポジションを奪われる世界です。そのことは本当に気づいてほしい」

── 選手たちには野球だけでなく、道徳的なことも厳しく教えていました。

「野球の練習だけをしていればうまくなるかといえば、そうではない。普段の生活のなかでも、気配り、目配りを当たり前のようにしてほしいと思っています。僕は少年野球に携わったことがあって、子どもたちはプロ野球選手のマネをするわけです。帽子のつばを真っすぐにしているチームもありましたし、道具をちゃんと並べられるチームもあれば、できないチームもある。くだらないことかもしれませんが、ユニフォームの着こなしや身なりだって、プレーと同じぐらい大事だと感じています」

── そうした厳しい姿勢に"鬼コーチ"と表現されることもありました。

「今の人たちから見れば、時代遅れなんでしょうね。僕だってもちろん嫌われたくないですけど、若い子に好かれるようにやっていたら、伝えたいことをひとつも伝えられないと思ったんです。ずっと厳しかったかといえば、そうでもなかったと思うんですけどね(笑)。選手たちには、基本は男らしくあってほしいと思っていました。そうなればプレーも力強くなり、責任感も出てくると思うんですよ」

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