光る「コミュ力」。DeNAの中心にいる正捕手・伊藤光の意外な一面 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

 一方、伊藤はピッチャーとのコミュニケーションについて、次のような見解を示した。

「ピッチャーというのは、基本的に"感覚"を大事にする人種なんです。だけど感覚だけで『よかった』『悪かった』と終わらせてしまうと、次につながらない。だからいい部分をまずはしっかりと伝えて、『次はこうしよう』という意見を交わすようにしています。そうするとピッチャーは自分のことをきちんと見てくれているとなり、信頼を寄せてくれる。極端な話、自分の仕事はそれだけなんですよ」

 また特筆すべきことは、昨シーズン2つだけしかなかったピッチャーの完投が、今季はここまでで早くも4つを数えている。三浦大輔投手コーチの就任により、今季は先発陣がイニングを稼ぐ傾向にあるものの、正捕手として投手をリードする伊藤の存在も大きい。

 じつはオリックス時代、伊藤はレギュラーとしてマスクを被っていた2013年に8回、2014年は7回、ピッチャーを完投に導いている。ピッチャーの違いはもちろん、パ・リーグはDH制を採用しているため一概には比較できないが、それでも伊藤はピッチャーを完投させるコツを知っているように思えるのだが......。

「うーん、どうなんでしょうね」と少し考え、伊藤が口を開く。

「もちろん完投も完封もさせたいし、それがピッチャーの醍醐味ですからね。まあ、細かいことの積み重ねですね。たとえば、無駄な四球を出さない、エラーが出たらバッテリーで粘る、得点した次のイニングは0点に抑える......。最初から9イニングをイメージしているわけじゃないし、まず立ち上がりからバッターにどんな球を意識させ、抑えていくのか。勝負のヤマは9回だけじゃなく、初回から訪れることもあるし、得点すると試合も動きます。いかに流れを読み、勝負どころで声がけするようには心がけています」

 勝ち頭の今永昇太や今季2度の完封勝ちを収めている濱口遥大、ルーキーの上茶谷大河らは、幾度となく伊藤の"声がけ"に救われたと言っていた。

「基本的に、僕は"甘いボール"で抑えてほしいんですよ」

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