2019.06.05

全米ドラ1男がソフトバンクへ。
MLBとの仁義なき契約戦争が始まる

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Kyodo News

 福岡ソフトバンクホークスが、昨年のMLBドラフトでアトランタ・ブレーブスから1巡目指名を受けたカーター・スチュワートと契約したというニュースは、日米の野球界に衝撃を与えた。

 従来、日米間のアマチュア選手の契約に関しては”紳士協定”が存在し、両国のドラフト候補に触手を伸ばすことを相互に控えるという慣習があったのだが、この”協定”には法的拘束力はなく、世紀が変わる頃からMLBの”資本論理”により、次第に形骸化していった。

 これを決定づけたのが2008年、ドラフトの目玉だった新日本石油ENEOS(当時)の田澤純一のボストン・レッドソックスとの契約だった。これに対し日本側は、NPBのドラフト指名を拒否して国外のプロ野球と契約した選手については、当該球団を退団したあとも大学・社会人出身なら2年間、高校出身なら3年間はNPB球団と契約できないとする”田澤ルール”で応酬。

ソフトバンクに入団したカーター・スチュワート しかし、より高いレベルでプレーしたいという選手の欲求と、MLBで手にできるかもしれない巨額の報酬の前には、このルールはまったくの無力で、昨年もパナソニックの吉川峻平がNPBのドラフトを前にアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ。

 こうした背景には、今世紀に入ってから拡大した日米両リーグ間の圧倒的な契約内容の格差があるのだろう。だからこそ今回、MLBのドラフト上位指名候補がこれを拒否してNPBの球団と契約したことは驚きをもって迎えられた。

 聞くところによると、スチュワートはドラフト指名後のメディカルチェックで手首に異常が見つかり、その結果、契約金を抑えられたことでブレーブスとの契約を拒否し、東フロリダ州立短大に進み、この6月のMLBドラフトを待つことになったらしい。

 しかし、今年のドラフトの評価も落ちたことから、代理人のスコット・ボラスの画策により、ソフトバンクとの6年700万ドル(約7億7000万円)という契約が成立したという。