渡辺久信だから言える。監督「森×野村」、
捕手「伊東×古田」の違い

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

西武×ヤクルト "伝説"となった日本シリーズの記憶(18)

【初戦先発】西武・渡辺久信 後編

(前編の記事はこちら>>)

森祇晶と野村克也の違い

――後に渡辺さんはスワローズに移籍します。在籍は1998年の1年間だけでしたが、このときには野村克也監督の下でプレーをし、古田敦也捕手とバッテリーを組んでいます。そこで、ライオンズとスワローズの類似点や相違点などを伺いたいと思います。まずは、ライオンズ・森祇晶監督と、スワローズ・野村克也監督についてはいかがでしょうか?

渡辺 ずっと西武で野球をやっていた僕が、西武から戦力外通告を受けた1998年にヤクルトに移籍したのは、「野村さんの下で野球をやりたい」という思いがあったからです。森さんと野村さんは、一見すると似ているけど、「全然違うな」と僕は思いますね。

――具体的にはどのような点が違うのですか?

渡辺 森監督は、選手の性格をきちんと把握されている監督でしたね。選手の性格を見極めた上で、「こいつには厳しく言っても大丈夫」とか、「こいつは、おだてておいたほうがいい」といったように、使い分けていたと思います。僕や工藤さんはいつもボロカスに言われていました。他の人には言えない分を、僕たちに向かって吐き出している感じでしたね(笑)。

――厳しく言われることに対して、どのように接していたのですか?

渡辺 スルーしていました(笑)。「あぁ、また何か言ってるねぇ」みたいな感じでしたね。もし僕がそれを気にするタイプだったら、森監督も、僕には何も言っていなかったでしょうね。

日本シリーズで6連勝を飾るなど活躍し、1998年にヤクルトに移籍した渡辺 photo by Kyodo News日本シリーズで6連勝を飾るなど活躍し、1998年にヤクルトに移籍した渡辺 photo by Kyodo News―― 一方の野村監督は?

渡辺 野村さんの場合は、しっかりと言葉で納得させてくれる監督でした。たとえば、カウントによって、投手心理、打者心理は、それぞれどのように違うのかということを、野村監督はきちんと言葉として伝えてくれました。もちろん、僕だってプロ野球選手として15年間やってきたわけだから、ある程度はわかっていますよ。でも、きちんと言葉で伝えられることによって、「この人、すげぇな」って、すごく共感したんです。

――では、森さん、野村さんと共通項はありますか?

渡辺 共通項? うーん、キャッチャー特有の"腹黒さ"かな? もちろん、いい意味でですよ。キャッチャーっていうのは、それぐらいじゃないと通用しないんでしょうね。......「腹黒い」って、いい言葉じゃないですね。何て言うのかな? あっ、「したたかさ」とか「計算高さ」のほうがいいね(笑)。いいキャッチャーってみんなそうですよ。

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