矢野燿大、与田剛はどのタイプか。名コーチが説く「いい監督の条件」 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 選手の調子がいい時はあまり動かず、調子が落ちてきたら代える。その繰り返しでチーム全体の調子を一定のレベルに維持する。言葉にするとすごく簡単なようだが、本当に難しい。それができれば、もう十分に一流監督である。

 そして監督のもうひとつの大事な仕事が育成である。たとえば、若い打者はいい時は爆発的な力を発揮する反面、出場が続けば集中力、体力が消耗し、調子を落とす。だが、調子が落ちたからといって外してしまえば、主力選手に育たない。だからといって、我慢して使い続けるとチームにも悪影響を及ぼす可能性があるし、なによりその選手がさらにスランプになることもある。

 多くの場合は技術の問題なのだが、二軍に落として鍛え直すのか、それとも一軍に帯同させて調整させるのか、その判断は非常に重要になる。選手の状態から決めることがほとんどだろうが、たとえば対戦カードを見て相手投手のレベルがやや落ちると見て、使い続けることもある。それで調子を上げた選手を何人も見てきた。

 監督というのは、目の前の試合を戦いつつ、自軍の選手の調子を見極め、次のカード、あるいはその先のスケジュールを見渡して、選手起用を考える。もちろんコーチの手助けはあるが、最後に決めるのは監督だ。代打、投手交代など、成功すればいいが、失敗すればやり玉に挙げられる。

 その重圧のなかで毎日ベンチに座り続けるのは、傍目から想像する以上に過酷である。正直、3~4年もやれば、寿命が縮んでしまうのではないか......本当にそう思えるぐらい大変な仕事だ。

 それでもプロ野球の一軍監督というのは、12人しかなれない。誰でもできるわけではない。言わば、それだけ名誉な仕事であるのは間違いない。とはいえ、くれぐれもお体だけには気をつけて(笑)。

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