千賀、榎田...好投手を輩出し続ける「八女の虎の穴」に潜入取材 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

 人間の身体は"うで体=猫背"と"あし体=反り腰"に二分されるという鴻江理論――その考え方に基づいて、うで体、あし体のそれぞれに合わせたフォームがあるという鴻江は、それぞれのピッチャーに正解があると続けた。

「ひとりひとりに理想の答えがあるんです。同じうで体でも右ピッチャーと左ピッチャーでは違うし、あし体でもそう。身長差もありますし、生活習慣や使っている靴、ベッド、着ている服も関係しています。僕は、うで体、あし体のそれぞれに10項目のチェックプランを持っていて、それぞれのタイプはその10項目をすべてクリアしなければなりません。うで体の人が、ひとつでもあし体の動きをしてしまったら、それはウイルスが入ってしまうようなものなんです。だから、自分がどちらのタイプで、どう動くべきかを理解しなければなりません」

 練習が終わると、選手たちは三々五々、汗を流し、夕食をとる。やがて、あたりがすっかり暗くなると、"八女の虎の穴"の夜の部が始まる。

 鴻江スポーツアカデミーの"本部"にスタッフが籠って、昼間、撮影した映像を二分割に加工。選手たちがそれを見ながらそれぞれの正解を確認し、互いのフォームについて侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を戦わせる。それがまた勉強になる、と選手たちは言う。

 ホークスのチームメイトとはいえ、千賀は2つ上の東浜にも遠慮しない。練習で投げ始めたときのフォームと、鴻江の言葉に従って変わろうとして投げ続けた末の最後のフォームは、映像で比較すると明らかに違っている。目の前で二分割の映像を見せられた選手たちは、まず、あまりの違いに驚き、その違いは進化であると感じ取る。そして、今までの常識と逆の発想に立たなければ、その進化が身につかないことを思い知る。鴻江は言った。

「人間の一瞬の、囁くような動きを身につけることができます。みんな、そのためにここへ来るんです」

"八女の虎の穴"で答えを見つけた選手たちは、それぞれの宿題と希望を抱えて、2月1日、キャンプに突入する――。

  『あなたは、うで体? あし体? 3秒で体がわかる、人生が変わる』

鴻江寿治(こうのえ・ひさお)著

人はみな、「うで体(猫背型)」「あし体(反り腰型)」の2種類に分かれている──。松坂大輔、千賀滉大、上野由岐子など一流アスリートに寄り添ってきたカリスマスポーツトレーナー・鴻江寿治(こうのえ ひさお)氏が、独自の「骨幹理論」を一般の人々に応用した初めての書籍。

【発売日】2018年9月14日

【発行】集英社

【定価】本体1400円+税

【著者プロフィール】

1966 年福岡県生まれ。学生時代に肩を故障したのをきっかけに、さまざまな施術 を勉強し、自ら復活。その後、トレーニングのノウハウを学び、「鴻江理論から生 まれた骨幹理論」を確立した。現在、野球、ソフトボール、ゴルフ、バレーボール、 陸上、サッカー、相撲、格闘技などのトップアスリートのアスリート・コンサルタ ントとして活躍中。WBC第1 回・第2回日本代表チーム、アテネオリンピック野球・ バレーボール女子日本代表チーム、トリノオリンピックスピードスケート日本代表 チーム、北京オリンピック野球・ソフトボー ル・バレーボール男子・女子日本代 表チームに、パーソナルトレーナーとして帯同。

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