いつか「AREA66」の後継者を。岡田幸文が故郷で目指す次なる夢 (2ページ目)

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Kyodo News

 ほかにも、美技に隠されたこだわりはいくつもある。

 まずは構え方。岡田はピッチャーが投球動作に入ると、内野手と同じように低く構える。そしてピッチャーの球種、コース、バッターの構え、タイミングの取り方、スイング軌道などを見ながら、半歩動き出す。

 フライの対処も、打球が上空にある約5~6秒を有効に使い、まずは落下地点を判断。強風の影響を受けないためにも、走り出しはギリギリまで我慢して、スピードをできるだけ落とさないで落下地点まで走るという。

 ほかにも、ここでは書きつくせないほど、守備に対するこだわりはあるのだが、今後は選手の能力に合わせて伝えていくつもりだ。もちろん、感覚で伝えるのではなく、しっかり相手に伝わるように、ひとつひとつ噛み砕いて話すという。そのために話し方についてもいろいろと研究中だ。

「感覚で教えてもわからないし、伝わらないですからね。足の使い方ひとつをとっても、どうやって言えば相手に伝わるか。それを常日頃から考えてないといけない。今までは自分の感覚でやってきたわけですが、それを言葉にして、しっかり伝える。頭をすごく使うと思います」

 ときには、サッカーやバドミントンなど、野球以外のスポーツも取り入れて、体の使い方なども覚えさせたいと言う。そう語る岡田の目はとても輝いているし、まるで天職を得たといった様子だ。

 現役最後の1~2年は、何打席連続でヒットが出ていないとか、2000打席以上立って一度もホームランを打っていないとか、不名誉なバッティングの記録を記事にされることが少なくなかった。

 ヒットを打つ夢を見るほど悩んだ時期もあったが、このことが引退の引き金になったのかと言えば、決してそうではない。岡田が引退を決意した本当の理由は、プロ入り後から「これだけは絶対に譲れない」と言い続けてきた守備力。その守備力でチームの期待に応えられなくなったと感じたのが一番の理由だった。

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