「代打の切り札」矢野謙次。巨人→日本ハムに移籍後2年は悩んでいた (3ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Kyodo News

──そうして長らく活躍された巨人から、2015年シーズンの途中にトレードで日本ハムへと移籍します。日本ハムの印象はいかがでしたか?

「『巨人とは真逆のチームだな』と思いました。控え選手だった僕を、栗山(英樹)監督やコーチたちは『頼むぞ! 任せたぞ!』と迎えてくれたんです。野球に取り組む姿勢を若い選手に見せてほしいという意味もあって、ですけどね。いい意味で実力主義の巨人では、なかなかスタメンになれない"反骨心"で野球をやっていたので、逆に力んでしまうというか......皆さんの期待に応えるためにいろいろ無理をしたというか、移籍して2年くらいは悩んでいました」

──その他に、巨人との違いを感じたところは?

「試合中に、ある選手が送りバントを決めてベンチに戻ってきた際、『なんでバントなんだよ』と言ったときには目玉が飛び出るくらい驚きましたね。その選手は相手投手との対戦打率がよかったですし、もちろんジョークで首脳陣の方々が咎めることもありませんが、それは巨人とはまったく違う"選手のメンタルコントロール"の方法でした。

 また、2軍から1軍に上がったばかりの選手が、ノーヒットに終わった試合後に『明日がある!』と発言したのにも戸惑いました。でもそれは、日本ハムがある程度長く選手にチャンスを与えてくれる球団なため、次に向けて気持ちを切り替えていたということなのかなと。巨人なら早い段階で2軍に戻されますが、それが選手たちに緊張感をもたらしてくれるので、どちらが正しいというわけではありません。そういった球団のスタンスの違いを感じる日々でしたね」

──両リーグの投手、打者の特徴は?

「パ・リーグは速球を中心に勝負するパワー系な投手が多く、打者はそれに負けないようにフルスイングする傾向が強いように感じます。今季の西武はその典型でしたね。大きい球場が多数を占めることが要因のひとつだと考えていますが、それによって力と力の勝負が生まれやすいんだと思います。

 一方、比較的に狭い球場が多いセ・リーグでは、長打を打たれない変化球でかわすタイプの投手の活躍が目立ちます。打者に関しては、最近、パワフルになった印象はありますが、変化球に対応しやすい反対方向を意識したバッティングを重視した打者が多いように感じます」

──DH制もパ・リーグ特有の制度ですが。

「打撃専門の選手がオーダーに入るわけですから、当然、代打の機会は減ります。巨人時代では先発投手が早々にノックアウトされた時点で起用されることがありましたが、パ・リーグではそれがない。僕はけっこう早く慣れましたけど、思い返せば、巨人に移籍してきて出番の対応に戸惑っていた選手が多かったように見えました」

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