年齢とともに変化を。巨人・山口鉄也が胸に刻んだ中日・岩瀬の金言 (2ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Kyodo News

──2008年から9年連続で60試合以上も登板した山口選手にも、そんな弱気な一面があるんですね。

「ブルペンで準備しているときは、けっこうネガティブなんですよ(笑)。60試合以上投げていたシーズンも、『今日は打たれるんじゃないか』『この場面でマウンドに上がりたくない』と思っていました」

──キャッチャーとしてプロ3球団を渡り歩き、2012年には巨人でもプレーした中谷仁さん(現・智辯和歌山高校野球部の監督)が、「山口は、ブルペンでは『誰かに代わってもらいたい』などと弱音は吐いているけど、マウンドに上がったらちゃんと抑える」と話していたことを思い出しました。

「まったくその通りです。ブルペンでは弱気なんですが、マウンドでは『開き直って投げるんだ!』と気持ちを切り替えていました。一度ネガティブになるからこそ、OFFからONにうまく切り替えられているように思えるんです。ずっと気を張っていたらしんどくなってしまうので、いい意味での"逃げ道"を作っているということですかね」

──実際に登板する場面で、スイッチがONになるのはいつですか?

「自分の名前がコールされて、ベンチからマウンドに向かって走り出す瞬間にアドレナリンが出るのを感じます。そこから投球練習をするうちに、アクセルを全開にしていくんです」

──そんな過酷な状況で活躍されてきた山口投手が、今のプロ野球界で注目するリリーフ投手はいますか?

「オリックスの山本由伸投手(20歳)ですかね。真っすぐが速くて、フォークもよく落ちる。高卒2年目なのにすごいと思います」

──同じ左腕のリリーフで、1000試合登板が間近の中日ドラゴンズ・岩瀬仁紀(ひとき・43歳)投手も健在です。

「野球人として本当に尊敬できる選手のひとりです。レジェンドですし僕が言うのもおこがましいのですが......投手は一度ケガをすると、再びマウンドに上がる際に痛めた箇所が気になり、腕を振れきれないことも多いんですが、岩瀬さんの投球からはそれを感じない。投球術は相変わらず巧みですし、1000試合近くも投げてこられたのは『すばらしい』のひと言です。

 実は、何年か前のオールスターゲームで岩瀬さんとご一緒したときに、アドバイスをもらったんです。『年をとるとコントロールとキレが重要になる。カットボールを投げるなど"小細工"をしながら、ボールを出し入れすることも考えなきゃいけないよ』と。その後の参考にさせていただきました」

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