松坂大輔、ドラゴンズでの復活に向けて「痛みへの恐怖心」に勝てるか (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 第1クールの北谷は、松坂一色に塗りつぶされていた。まさに、"平成の怪物、北谷降臨"――ピッチャーとしての松坂に懐疑的な目しか向けられていなかった、ついこの前までのあのネガティブな空気はどこへ行ったのか、という変わりようである。

 しかし、何も変わっていないことがひとつある。

 それは、去年も今年も......いや、ここ何年もの間、明日のことを心配しなくていい今日であったことはない、ということだ。ちょうど去年の今ごろ、松坂はこう言っていた。

「野球が楽しいなって、また思えるようになってきました。たぶん、ちょっと投げられるようになってきたからだと思います。今は痛いところはありません。ただ、感覚的に肩周りの状態には波があって......いいときには朝起きてすぐ、『あ、今日はいいな』と思うし、ちょっと落ちている感じがするときは『今日はまだまだだな』って思ったりします。手術した場所の感覚は日によって違うんですよね。

 でも、去年(2016年)あった不安というものは、だいぶなくなってきています。今年(2017年)、目指しているのは腕を強く振るということです。そのためにはちょっとした間を取る動作が必要なんですけど、その間を作る余裕が持てなくて、腕を前で強く振れない。タイミングがうまく取れなかったんです。もしかしたら、心のどこか深いところで怖さを持っているのかもしれません」

 そして今年、初ブルペンで投げ終えた直後の松坂は、こう言っている。

「ちょうど気候もよくなりましたし、予定していたよりも少しだけ多く投げてしまいました。キャッチボールのときもそうなんですけど、たまに痛めていたときのかばう動作っていうのがちょいちょい出るので、自分の体に『大丈夫だよ』と言い聞かせながら投げていました。森監督からも『気になる動きがあるよ』と言われて、僕は『たぶん、こういうことだと思います』と理由を話したんですけど......それは腕の使い方ですね。無駄な力が入ってしまうというか、痛めたときの動作が出て、無理やり投げてしまうというのがたまにあったので、それを少しずつ減らしていけたらいいなと思います。いろいろな部分でのタイミングを確認しながら、ズレないように同じリズムで、と思いながら投げてましたけど、出来はまだまだです。(気持ちよく投げられた感じは)いやぁ、まぁ、今のところ、去年よりは......ハイ」

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