苦悩のエース藤浪晋太郎に、あの超ノッポ右腕が体験から伝える再生法 (2ページ目)

  • 田中将介●文 text by Tanaka Masayuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「トップの位置、ステップの幅、左手の使い方、いろいろ変えたけど、最終的には『角度をつけること』に行き着いた。そうしたらスピードも上がって、コントロールもチェンジアップも良くなった。特に意識させたのが下半身です。軸足を折ることなく、マウンドの傾斜を利用して投げる。下半身の動きがスムーズにいくとすべてがいい方向にいったんです」

 ついつい「背の大きい選手を特別な目で見てしまう」と話す門倉は、現役時代、葛藤を抱えながら、もがき続けていた。

 ルーキーイヤー、7月に一軍に昇格すると、後半戦だけで7勝を挙げる。2年目、3年目と2ケタ勝利を飾り、このまま順調に行くかと思った4年目、わずか2勝に終わった。そしてオフには近鉄へトレードされ「チームに必要とされていないのか」と深い哀しみに暮れた。

「今の藤浪と一緒で僕もコントロールのいい投手ではなかったし、腕もやや横から出ていたのでマウンドで大きさを感じさせる選手ではなかった。若いときは勢いだけで、ただ思い切り腕を振っていればボールも適当に散らばって、何とかなったんです。それが4年目になって、勢いが落ちてきた感覚に陥ったんです」

 門倉は苦しんだ4年目のシーズンで立ち止まった。どうしたらこの世界で生きていけるのか......門倉の出した答えは"角度"だった。

「それまで対角線に投げることを追い求めていたのですが、高さを生かすために真上から直線的に投げる意識に変えました。ボールを縦に入れるイメージです」

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