鳥越コーチの退団こそホークス最大の痛手。
名手を育て上げた魂のノック

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 これはちょっと異例の事態だ。2年ぶりの日本一に返り咲いた翌日、ソフトバンクから発表されたのは一軍コーチ3人の退団だった。しかも、3人とも同じパ・リーグの他球団に移籍するというのだ。

 佐藤義則投手コーチは楽天へ。鳥越裕介内野守備・走塁コーチと清水将海バッテリーコーチは、井口資仁が監督に就任したロッテ入りが有力視されている。また、昨年まで6年間一軍打撃を担当し、今年は二軍で指導していた藤井康雄コーチもオリックスへ移ることがすでに発表された。

今シーズン限りでソフトバンクを退団するとこになった鳥越裕介コーチ今シーズン限りでソフトバンクを退団するとこになった鳥越裕介コーチ 11月11日から宮崎で行なわれたソフトバンクの新体制での秋季キャンプ。

「あの大きな声がないと、なんか雰囲気が違うよね」

 球団関係者がボソッとつぶやいた。今回、4人のコーチがチームを去るが、"あの大きな声"の主である鳥越コーチの退団が、ソフトバンクにとっては最も痛手で、チームに大きな影響が出るのではないだろうか。

 2006年にソフトバンクで現役引退後、翌年から11年間、指導者としてチームに携わってきた。自身が1997年に遊撃手で守備率.997の日本記録を樹立した名手だったこともあり、その指導力には定評があった。

 今年、ソフトバンクはシーズン143試合で38失策しかなく、歴代最少タイ記録をマークした(チームの守備率.993は日本新記録)。さらに、甲斐拓也(捕手)、松田宣浩(三塁手)、今宮健太(遊撃手)、柳田悠岐(外野手)の4人がゴールデングラブ賞を受賞。1球団から4人は、もちろん12球団最多である。

「投げる」「打つ」だけなく、「守り勝つ」野球こそ、まさしくソフトバンクの真髄だった。

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