お前が打たなきゃ誰かが打つ。
カープ黄金期を予感させる圧倒的な選手層

  • 大久保泰伸●文 text by Ohkubo Yasunobu
  • photo by Kyodo News

「お前が打たなきゃ誰が打つ」――野球の応援ではおなじみのフレーズだが、今年の広島にはこれが当てはまらなかった。

 シーズン終盤、不動の4番だった鈴木誠也が故障で離脱したが、代わって4番を任された松山竜平がきっちり穴を埋め、菊池涼介、丸佳浩に当たりが止まった9月前半には、岩本貴裕が4割台をマークし、安部友裕も3割台後半を記録。「お前が打たなきゃ誰か打つ」という状態だった。

 投手陣も、黒田博樹が引退し、昨年の沢村賞投手のクリス・ジョンソンが開幕直後に咽頭炎で長期離脱した先発では、岡田明丈と薮田和樹が2ケタ到達の大躍進。リリーフでも中﨑翔太の不調で不在となった抑えに今村猛が入り、中継ぎが苦しい時期には九里亜蓮が先発からの配置転換で存在感を見せつけた。

阪神を3-2で下し、37年ぶりのリーグ連覇を達成した広島阪神を3-2で下し、37年ぶりのリーグ連覇を達成した広島 誰かがいなくなっても代わりの選手が台頭する。これはカープの伝統でもある。特にFA制度が施行された1990以降は、その傾向が強い。

 たとえば、95年に前田智徳がアキレス腱断裂で長期離脱した際には、野村謙二郎がトリプルスリーの活躍を見せた。その野村や前田、緒方孝市など、ケガ人が続出し、江藤智がFAで巨人に移籍した2000年には、金本知憲がトリプルスリーを達成。また、金本が阪神に移籍すれば新井貴浩が台頭し、その新井もチームを去ったときには栗原健太がその穴を埋めた。

 さらに、黒田がメジャー移籍した08年に前田健太が先発ローテーションに定着して9勝をマーク。2年後の2010年には15勝を挙げるなど、投手三冠を獲得しエースに君臨した。その前田もメジャーに移籍した昨年は、野村祐輔が16勝で最多勝に輝き、チームも25年ぶりのリーグ優勝を果たしたのは記憶に新しいところだ。

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