阪神・秋山拓巳、
8年目の「脱スピード」で蘇った
高校時代の凄いキレ (2ページ目)
184センチ、90キロという堂々とした体躯(たいく)から投げ下ろしてくるのだから、てっきり豪快なパワーピッチャーだと思っていたら、しなやかな身のこなしと腕の振りから1球1球、丁寧に投げ込んでくるピッチングスタイルだったことにまず驚いた。
カーブは落差が大きく、鋭くタテに曲がってからさらに加速するので、まさに空振りを奪える必殺兵器。ストレートも両サイドにきっちり投げ分け、構えたミットをほとんど外さない。
30球ほど投げてもらい、仕上げにどこに投げてもらおうかと思い秋山に聞いたら、「アウトローのストレートをお願いします。自分の生命線なんで」と間髪いれずに返してきた。
その"アウトロー"のストレートが素晴らしかった。右腕の軌道が頭に近く、リリースポイントも顔の前に見えた。その位置でボールを離すことができれば、「そりゃ、ここに来るよな......」と納得の1球。おまけに半身でどっしりと踏み込み、一気に鋭く体を切り換えるからボールに勢いがつく。見事なまでにタテの角度がついた快速球が、右打者のアウトローに決まった。
「このベストボール、何球続けられるかやってみよう!」
マウンド上で秋山がニヤッとしたように見えた。
「さあ来い、ここだ! 勝負だ!」
そこからの秋山がすごかった。それまでにこやかに投げ続けてきた表情が一変し、怒っているようにも見えた。
立て続けに9球、アウトローに構えたミットにズバズバと決まった。スピードは140キロ前後だったが、1球も垂れることがなかった。
「自分、アウトローだったら、いつでもストライクが取れるんですよ」
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