2017.03.24

WBCは小林誠司のためにあったのか。
驚きと感動の好プレー7試合

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 WBCは小林誠司のためにあるのか──!

 日本で開催された1次ラウンド、2次ラウンドの6試合を見て、何度そう思わされたかわからない。東京ドームを埋め尽くした大観衆は、いつの間にかこの27歳の捕手の成長を見守るために集まっているかのようだった。

WBC準決勝のアメリカでも先発の菅野智之(左)を好リードした小林誠司 最初は誰もが半信半疑だった。「正捕手不在」と不安視する声も小さくなかった。1次ラウンド初戦・キューバ戦で迎えた最初の打席で、送りバントを2度ファウルした際には、スタンドからは大きなため息が漏れた。「せめてバントくらい決めてくれよ」「本当に小林で大丈夫なのか?」。当初はそんな雰囲気が充満していた。

 だが、バントを失敗した直後、外へと逃げていくスライダーに食らいついてセンター前に運んでから、風向きが変わった。3打席目には当たり損ねのボテボテのゴロが内野安打となり、5打席目にはダメ押しの犠牲フライを放った。初戦を終えた後、小林はこんな感想を漏らしている。

「すごく緊張しましたけど、いろんな人が声を掛けてくれて、『やってやろう』と引き締まりました。1イニング、1イニングを全力で後先考えずに、やるべき役割をやっていった感じです。バッティングはもう……、バントをしっかりやっていかないといけないですね」

 捕手としても日に日に頼もしさを増していった。初戦のキューバ戦は6点を失って「単調になってしまったかも」と反省を口にしていたが、以降は個性派ぞろいの投手陣一人ひとりを丹念にリードしていった。大車輪の働きを見せた千賀滉大からは「誠司さんがいいところを引き出してくれた」と賞賛されている。