東大に7失点、背番号降格。苦しんだ巨人ドラ1・桜井俊貴が誓う逆襲 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 途中、阿部慎之助が目慣らしのためにブルペンのバッターボックスに入った。たとえプロといえど、"チームの顔"が打席に入れば多少、心を乱されてもおかしいことではない。だが、桜井は表情ひとつ変えることなく、しかも阿部の内角低めにボールを集め続けた。相手に打つ気がないとはいえ、少し手元が狂えば開幕前の大事な時期に大ベテランにケガをさせてしまう危険もある。それでも桜井は見事に自分とボールをコントロールして、阿部の内角低めにストレートを何球も続けてみせたのだった。

 投球練習後、桜井になぜ阿部のインコースばかりに投げたのかを聞くと、こんな内幕を明かしてくれた。

「今日は右バッターの外角低めを練習していたんです。阿部さんが打席に入られても、僕はその練習を続けたかったので、結果的に左バッターの内角低めになりました。課題は『低めに集める』ということだったので、その意味ではいい感じに投げられたと思います」

 周囲に流されることなく、自分のペースで自分のやりたいことをやる――。そんなプロとしての自覚が垣間見えるコメントだった。

 今から約3年前、立命館大3年生だった桜井の投球を大学選手権で見たことがある。そのときは、この投手が1年後にドラフト1位指名を受ける投手になるとは、思いもしなかった。特筆すべきスピードがあるわけではなく、攻略困難な変化球があるわけでもない。大学生としては好投手でも、プロでは月並みで埋没してしまうように見えた。

 だが、それから1年後、桜井は着実に成長した姿を見せた。特にドラフト会議後、11月の明治神宮大会・東北福祉大戦での登板はまさに「快刀乱麻」だった。

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