「野々村イズム」を胸に。阪神5位の糸原健斗は魂でプレーする男

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 宝くじが当たる人には、ある共通点があるという。それは「宝くじを買い続けている」という、ごく単純なものだ。何事も分母が増えれば、奇跡的な出来事に遭遇する確率は上がってくる。

シュアな打撃が持ち味の糸原健斗シュアな打撃が持ち味の糸原健斗 筆者にとっては2009年10月26日に行なわれた秋の高校野球・中国大会準々決勝が「当たりくじ」だった。鳥取県にある「どらドラパーク米子市民球場」というローカル球場で繰り広げられた4試合には、広陵・有原航平(現・日本ハム)、石見智翠館・戸根千明(現・巨人)、岡山東商・星野大地(現・ソフトバンク)といった、のちにプロに進んだ好選手も続々と登場。どの試合も見どころが満載だった。

 そんななか、いまも忘れられないシーンがある。

 あるチームの、決して身長の高くない左打者が、逆方向であるレフトスタンドにホームランを放った。それも、1試合で2本だ。1本目は速球に対して「詰まったかな」というフライが、驚くほど伸びてレフトスタンドに入ったもの。2本目はさらに圧巻だった。この選手は投手のモーションに合わせて一歩歩いてからスイングし、高めのカーブをレフトスタンドに運んだのだ。

 このシーンを目撃して、全身にゾクゾクと震えが起きた。両翼92メートルの狭い球場とはいえ、フェンスは低くなく、内容も「えげつない」としか言いようがない2発だった。試合後、その選手のもとへ走り、聞いてみた。「なぜ打席で歩いたのか?」と。するとその選手は、あっけらかんとこう答えた。

「イチかバチかです」

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