ホークスを二刀流で圧倒。大谷翔平が体現する「非常識な常識」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 今年の10月12日、ホークスとのクライマックスシリーズ、ファイナルステージ初戦。大谷は"8番、ピッチャー"としてスタメンにその名を連ねた。そして、ピッチャーとしては最速162キロのストレートと、キレキレのスライダーを駆使して、7回を1安打無失点に抑えた。バッターとしても0−0の5回に、ホークスの先発、武田翔太からセンター前へヒットを放って、先制点へのつなぎ役となった。

 この試合の中だけでも、大谷のバージョンアップはいくつも見て取れる。

 たとえば去年、つるべ打ちを喰らったストレートは今年、1本のヒットさえも許さなかった。大谷はこの日のホークス戦で102球のうち、ストレートを55球投げているのだが、前に飛ばされたのはわずか7球。4回表、先頭で迎えた3番の柳田悠岐に対しては、161キロのストレートで空振り三振に斬って取った。大谷はこの場面についてこう言った。

「あそこは三振取りに行きましたし、真っすぐで三振を取りに行くのが、流れをグッと手繰り寄せられる場面でした。どの球種がいちばん三振を取れるのかなということは考えてますし、あそこは真っすぐがいちばん抑えられるという自信もありました」

 そう言いながら、この日、奪った三振は6個。試合後の大谷は、「ムキになって」という言葉を何度も使った。

「あのとき(優勝を決めたライオンズ戦)はツーストライクまで追い込んだら三振を取りに行ってました。でも今日は追い込んでも"ムキになって"取りにいかないことが、いちばん確率高くゲームを進められるかなと思ったので......ホークスには粘るバッターも多いので、"ムキになって"三振を取りにいかないように、打たせて取る感じでいきました。三振を狙いに行って取れる打席もありますけど、"ムキになって"(ボールが)抜けて打たれるよりは、確実に取りにいくほうがよかったんじゃないかなと思います」

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