王者ソフトバンク打線に聞いた、プロ初登板・小笠原慎之介のすごさ (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Kyodo News

 じつは、内川は小さなパニック状態に陥(おちい)っていた。

「投げてくるボールがハッキリしなくなったことで、打撃を難しくしてしまいました。ストレートが来るのはわかっていたけど、データではチェンジアップも多投すると認識していたし、この日よかったのもわかっていた。頭の中では真っすぐを待ちながら、自分では無意識にチェンジアップのことを意識してしまっていた。自分の意識より無意識が勝つと表現すればいいんですかね。だからタイミングが合っていると思っても実際は詰まっていた。久しぶりに18.44mのピッチャーとの空間に迷いながら打席に立っていました」

 第3打席の5回二死満塁も、138キロとややスピードが落ちていたにもかかわらず、詰まったセンターフライに打ち取られた。

「とにかく落ち着いて投げていたことがびっくり。自分が18歳の時なんて、一軍の試合に出ることすら考えられなかった。インコースもきっちり投げてくるし、度胸のよさは、羨ましくもありましたね」

 そして、内川の口から思いもよらぬ言葉が出た。

「久しぶりに打撃の難しさを感じさせられました。勉強させてもらいましたよ」

 最大級の賛辞だった。

 最強軍団ソフトバンクを脱帽させた18歳ルーキー。底知れぬ可能性を秘めたプロ野球界の新星がここに誕生した。

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