「指力」強化で巨人・菅野智之が手にした「ものすごいスピン」 (2ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 その言葉を裏付けるように速球の威力は確実に増し、受けた捕手もそれを実感した。1月24日に今年初めてブルペンに入り、立ち投げで20球を投げた。「最初のブルペンは(相手は)小林と決めていた」と、昨季、最も多くコンビを組んだ小林誠司に違いを感じてもらいたかった。もちろん、全力ではなかったが、小林は「力を入れていないのに強い球がきている。回転がいい。勢いや、ボールのスピンも多くなっている」と、明らかな違いを証言している。

 キャンプに入ると、ベテラン捕手も絶賛した。2日目に初めて捕手を座らせ、本格的な投球を行なったが、受けた相川亮二は「別世界にいきそうな感じ。僕が思っている菅野の球じゃない。間違いなく去年よりスピン量が上がっている。1段階ではなく、2段階、3段階上がっている感じがする」と称賛の言葉を並べた。

 さらに、球をはじく力が増したことでスライダーも改良された。相川は「曲がりが数段、上がっている」。見守った高橋由伸監督は、仕上がりの早さに「ちょっとびっくりしました」と素直な感想を漏らした。

 ただ、握力が増したことで、ツーシームは指に掛かり過ぎ、変化が大きくなってしまった。そのままでは真ん中近辺に集まり「危険な球になる」と考えた。そこで菅野は原点に戻った。それがワンシームだ。ルーキー当時は投げていたが、制球の難しさからここ2年は封印していた。

 キャッチボールでワンシームを試し、「いい軌道だった」とツーシームの代わりとして十分に使える球だと感じた。以降はブルペンで多投し、オープン戦などの実戦でも出し惜しみなく使っている。

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