オリックス中島宏之「俺のショート」に懸ける思い (2ページ目)

  • 波佐間崇晃●文 text by Hazama Takaaki
  • photo by Kyodo News

 初回、ショートへのゴロを無難にさばいて3アウト目を奪うと、ベンチに戻る際に笑みがこぼれた。実戦でのショートの守備機会は、昨年4月15日福岡ソフトバンクホークス戦の8回表に今宮健太のゴロを処理して以来。笑顔は安堵の表情にも見えた。

 西武ライオンズ時代は押しも押されもせぬ強打の遊撃手だった。入団4年目の2004年にショートのレギュラーに定着すると、ニューヨーク・メッツへ移籍した松井稼頭央(現・楽天)の穴を埋める活躍を見せる。2008、2009、2011、2012年には遊撃手部門でベストナイン受賞。このうち2009年以外は同時にゴールデングラブ賞も獲得。

 しかし、3年ぶりに日本球界に復帰し、新たなチームでスタートを切った昨年は苦難の連続だった。先発出場した117試合の内訳を見てみると、一塁手が73試合、三塁手が37試合、指名打者が6試合、遊撃手としてスタメン出場したのは4月7日の1試合のみだった。

 そこにはすでにチームのピースとなっていた「ショート安達」の存在もあったが、中島自身が足の肉離れや腰痛に泣かされ、守備の負担を軽減する為の措置という面も多分に含まれていた。
 
 2016年のシーズン開幕まで1カ月を切った3月上旬、風岡尚幸内野守備コーチに話を聞いた。遊撃手に求められる要素を質問すると、「フィジカル」と「経験」という答えが返ってきた。打球への反応や様々な体勢からの送球等のプレーは、この2つのエッセンスが根幹をなすという説明してくれた。

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