巨人ドラフト秘話。単独1位・桜井俊貴のどこに惚れ込んだのか (3ページ目)

  • 高松正人●文 text by Takamatsu Masato
  • photo by Kyodo News

 ただ、4年間見届けてきた益田スカウトは桜井のレポートにこう書き添えていた。

「順調に育ってきた。故障もしていないし、タフな部分もある。コツコツとトレーニングを積んでいるし、学業もしっかりしている。もちろん、まだまだ課題はあるけど、吸収しようという意欲がある」

 1位で指名するかどうかの最終判断は球団首脳や山下哲治スカウト部長に委(ゆだ)ねたが、益田スカウトは「伸びしろ」と「人間性」を高く評価していた。

 一方、巨人の編成側も即戦力のローテーション候補を必要としていた。現時点で来季、先発として計算できるのが、マイコラスと菅野智之のふたりだけ。新人ながら9勝をマークした高木勇人は後半戦失速し、クライマックス・シリーズでは先発から外れた。また、8勝のポレダも残留が濃厚と見られているが、まだ契約は済んでいない。これまでローテーションを守ってきた杉内俊哉は右足股関節の手術を受けて開幕は絶望。内海哲也、大竹寛の両ベテランも今季それぞれ2勝、3勝と期待を裏切り、来季ローテーション入りできるかどうかはわからない。

 そうしたチーム事情もあり、今年は即戦力の逸材が多い大学生に絞り、大阪商業大の岡田明丈(広島)、仙台大の熊原健人(DeNA)、そして桜井らが1位候補として浮上した。

 1位指名を誰にするのか――最終的な絞り込みをするため、山下スカウト部長は自ら視察を行なった。そしてドラフトを約1週間後に控えた10月14日の立命館大と関西大の試合を観戦。立命館大が勝てば優勝に王手がかかる大一番で、桜井は素晴らしい内容のピッチングを披露した。延長14回をひとりで投げ抜き、206球、1失点完投勝利という見事な内容で、視察に訪れていた山下スカウト部長をうならせた。

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