2015.09.21

【根本陸夫伝】
試合中にもかかわらず下柳剛を延々と説教した男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 意地になって言い返した下柳は、蒸し暑いベンチに立たされたまま、30分近くも延々と根本に説教された。終わると、タオルを持ってきたヘッドコーチの小山正明に、「もっとはよ『はい』って言わんか」と叱られた。

「あの時は説教されてもまだ意地張って、このクソジジイって思ってましたけど、年を追うごとに、オヤジの言うことが正解だなと思えました。のちにオレが若いピッチャーに言ったのは、『相手からヒットされるようなところにボール球を投げる必要はないやないか』ってこと。『ボールっていうのは、ずーっと向こうまでボールやのに、なんでそんな近いとこに投げなあかんのや。バットが届いたらダメなんやって、オレも根本のオヤジに言われたんやけどな』って」

 ベテランといわれる域になると、下柳は監督、投手コーチに意見した。「クサいところを突いて、ダメやったら歩かせろ、という指示はやめてくれませんか。歩かせるなら歩かせろ、勝負なら勝負、はっきりしてくれたほうがいいですよ」と要望を出したのだ。

「クサいところが相手にとってストライクゾーンやったらどうするんや? っていうこと。まさにオヤジが言っていたとおりなんやけど、実際、ピッチングコーチも選手にそういうことを言うようになりましたから。でも、よく考えてみれば、クサいところ突いて投げるようなコントロールがあったら、もともとそんなピンチなんかならんよ、っていう話なんですけどね(笑)」