阪神・藤浪晋太郎、3年目の飛躍を生んだ「正しい脱力投法」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 キャッチャー出身の野口氏は「バッテリーの相性はどうしてもある」と語る。

「おそらく、藤浪が『次はこれを投げたい』と思ったとおりのサインがポンポンと出てくるのが鶴岡なんでしょう。そういうことが続くと、それが捕手への信頼となり、ボールの質も上がってくるんです。実際、鶴岡と組む時は、藤浪の仕草がスムーズというか、ぎこちなさが消えたように見えます」

「3年目の藤浪晋太郎」として見た時に、最も成長した部分はどこにあるのだろうか。藪氏は次のように言う。

「技術的な部分は大きく変わっていないと思います。制球力など課題はまだまだありますが、マウンドでの立ち居振る舞いを見ると、貫禄がついてきました。『エースらしくなってきたな』と思う時があります。味方も、藤浪が投げる試合は絶対に落とせないと思っているはずです。そうした信頼感を得たことが、最も成長した部分だと思います。まだ3年目ですが、エースと言っても過言ではない存在になっています」

 たしかに、藤浪が登板した試合は現在8連勝中。さらに完投数も、昨年の2回を上回る4回。まさしくエースと呼ぶにふさわしいピッチングを見せている。それでも野口氏は「まだ物足りない」と指摘する。

「日本の先発投手は週に1回しか投げません。そういう調整をさせてもらっているからには、藤浪や大谷翔平(日本ハム)といった若い投手には、もっと完投してほしい。少なくとも中継ぎを使わず、抑えに直接いくようでないと。藤浪は現時点でいい投手であることに間違いないのですが、まだまだ伸びしろだらけなんです。幸いなことに、阪神にはメッセンジャー能見篤史、岩田稔という次元の高い先発投手が揃っています。この3人を先生として、彼らが健在のうちにエースの座をつかみとってほしいですよね。そして日本のエースを目指してほしい」

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