西武・秋山翔吾は愚直に打撃を究める「修行僧」か!? (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 彼の"イチロー仕様"のプレイスタイルは、横浜創学館高当時から知っていた。そして、父親である肇さんが秋山の幼少の頃に病気で亡くなられ、そのあとを託された母親の順子さんが、秋山と弟の拓也くん、妹の実咲さんを立派に育て上げたということも、横浜創学館高の森田誠一監督からうかがっていた。

 しかもその当時、拓也くんは神奈川大の野球部員、そして実咲さんは女子ソフトボールの強豪・木更津総合高のスーパープレイヤーとして活躍していた。十分すぎるほどの"ストーリー"だったが、肝心の秋山がドラフトで指名されるのか、そこがボーダーラインになった。

 選手を追ってビデオは作成したものの、ドラフトで空振り。これは避けなければならなかった。

「秋山翔吾は本当にドラフトにかかりますかね? 間違いないですよね?」

 そのたびに私は「間違いありません」と自信を持って答えていた。「その理由はなんですか?」と聞かれると、先述したように「プロで10年、3割を打てる資質を持ったバッターだから」と答えてきた。

 正直、多少のハッタリはあった。なぜなら、ドラフトに「絶対」などありはしないからだ。しかし、変に自信があったのは、「ドラフト候補生の中に秋山以上の外野手がいるか?」という反問だった。

 快足と広い守備範囲。特にライトを守った時のクッションボールの処理なんて、プロでもこんなに上手い人はいないと思うほどのレベルだった。バッティングだって、全日本大学選手権で東洋大の乾真大(現・日本ハム)から内角の速球を神宮球場のバックスクリーン右にほとんどライナーで叩き込む非凡さを見せつけていた。

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