「門田理論を証明したい」。DeNAルーキー倉本寿彦の野望 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そんな誰よりも自分の力を信じる男にとって、昨年、大きな出来事があった。それが、日本新薬で臨時コーチを務めていた門田博光との出会いだ。昨年の2月、門田が1週間、チームの練習を見る機会があり、そこで倉本は門田の教えに心酔した。

「こんなことを言うのはおこがましいんですけど、門田さんの話を聞いて、すぐにその感覚、理論が自分に合うと思ったんです」

 門田は現役時代、南海、オリックス、ダイエーの23年間で歴代3位の通算576本塁打を放った伝説のアーチスト。その一方で、"変わり者""堅物"といった評判もあり、打撃理論にも独特の考えや表現が混じる。たとえば、こんな感じだ。

「プロの世界は、コンマ何秒で勝負せなアカンのに、オープンスタンスにしとったら間に合わん。ボールをよく見たかったら、首を柔らかくしたらええんや」

「ワシらみたいな体で外国人と勝負しようと思ったら、足を上げて、体をねじって、反動をつけていかんと無理なんや」

「ええバッターというのは、打席の中でダンスするんや」

 ちなみに門田が言う「ダンス」とは、テイクバックからトップへの一連の動きを指すもので、体を柔らかく使い、ボールをしっかり呼び込む形を意味している。この門田独特の打撃理論に興味を持つ者は多くいたが、実際に取り入れるとなると躊躇するケースがほとんどだった。

 しかし、倉本は違った。昨年から打ち方を一本足打法に変え、バットも「今の選手は箸みたいなものばかり使っとる。あれではボールは飛ばん」と語る門田の考えに添い、940グラムと昨今のプロの世界では重量のあるものを使っている。その結果、高校時代は3年間で3本、大学時代は4年間で5本だった本塁打が、昨年は1年間で7本を記録した。

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