選手会長・松田宣浩「あの時、ホークスは生まれ変わった」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by sportiva

 そんなチームの雰囲気をいち早く察したのが、細川亨、五十嵐亮太のベテランたちだった。

「本当は選手会長である僕が率先してミーティングを開くべきだったのですが、余裕がなかったのでしょうね。細川さんと五十嵐さんが中心になってやってくれました。そこでお互い思っていることを言い合い、意思の疎通が図れました。とにかく普段通り、自分たちのやれることをしようと」(松田)

 だが決戦当日、いつもとはまったく違う球場の異様な雰囲気に松田は戸惑った。

「ソフトバンクに入団して今年で9年になりますが、ヤフオクドームにあれだけの観客が入ったのは初めてでした。選手がグラウンドに出るだけで大歓声が起き、試合前のノックが終わると拍手が沸き起こったんです。こんなこと、今まで一度もありませんでした。『やってやるぞ』という気持ちはもちろんありましたが、『負けたらどうなるんだろう』という怖さも感じていました。日本代表の試合とも違う、独特の雰囲気がありました」

 球場の異様な雰囲気に合わせるように、試合も1点を争う緊迫した展開となった。2回にソフトバンクが1点を先制するも、7回にオリックスが追いつき、試合は1-1のまま延長に入った。そして迎えた10回裏、ソフトバンクは一死満塁のサヨナラ機を作り、ここで打席に入ったのが松田だった。

「ピッチャーがマエストリから比嘉(幹貴)さんに代わったのが、僕にとっては良かった。マエストリはタテの変化球が得意で、逆に比嘉さんはヨコの変化球を得意としている。僕としてはヨコの変化球はついていけると思っていました。とにかく、前に飛ばせば何とかなるかなという思いで打席に入りました」

 そしてカウント1ボール2ストライクからの4球目、比嘉の得意球であるスライダーを叩くと、打球は左中間を抜けるサヨナラ打となった。

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