巨人ドラフト1位・岡本和真のスラッガー育成法を考える (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 ここ5年間で日本人選手が40本の大台を突破したのは、2010年の阿部慎之助(44本)と2011年の中村(48本)のみ。こうした現実が、大きな数字をイメージしにくくしているのかもしれないが、これまでも岡本は「チームのために打ちたい」「勝つためのバッティングをしたい」と常々語っていた。しかし、夏が終わったあとには「プロに行けたら、1年目、2年目は自分をアピールしていかないといけないので、これまでよりも長打を意識したい」と、楽しみな言葉も口にしていた。周囲から期待を受ける中で、岡本自身がどこまでホームランにこだわっていくのか、興味深いところだ。

 また、岡本がよく比較されたのが大阪桐蔭時代に通算87本塁打を放った中田翔(日本ハム)だ。高校時代の中田は岡本に比べ打撃自体は粗かったが、岡本にないものをふたつ持っていた。ひとつはホームランへの強烈なこだわりだ。高校時代、当時、怪力でならしていたタイロン・ウッズの名前をよく出していた。

「ウッズなんか反則っすよ。こすってもホームランじゃないですか。でも、将来はあんな選手に負けないようなバッターになりたいんです」

 日本ハムからの指名を受け、札幌ドームを見学して戻ってきた時も、目を輝かせこんなことを言っていた。

「札幌ドームってメチャメチャ大きいんですよ。普通にいったらホームランなんか出そうにないですけど、でも、あそこででっかいホームランを打ちたいですね。誰にも負けない最強のバッターになっていきたいんです」

 そしてもうひとつ、中田には圧倒的なスイングスピードの速さがあった。プロ1年目のキャンプから周囲を驚かせたのはスイングの速さで、一線級の投手が相手でも振り負けないスイングスピードを備えていた。対して岡本は、ここに一抹の不安がある。

 高校時代の中村とも共通するが、変化球の対応という点で、岡本は高校生としてはかなり高いレベルにある。その反面、本人が「140キロを超すストレートはあまりとらえられていない」と言うように、速いストレートの対応に課題を残している。プロの質の高い真っすぐにどう対処していくのか。以前、プロ入り2年目を迎えた中田に話を聞いた時、「二軍の試合でも、キャンプの紅白戦でも変化球ばかりです」と言いながら、こんな話をしていた。

「本格派のピッチャーの時は、常に真っすぐ狙いなんです。そこは高校時代と同じです。高校の時は『オレを真っすぐで打ち取れるんやったら打ち取ってみろ!』という感じで打席に入っていましたけど、プロでもその気持ちは変わりません。とにかく、真っすぐで差し込まれるのだけは嫌なんです」

 その中田は1年目にイースタンリーグで56試合に出場し、打率.252、11本塁打、31打点の成績を残すと、2年目にはイースタンリーグの記録を塗り替える30本塁打を放ち、95打点で二冠王に輝いた。3年目には一軍で9本塁打を放ち、4年目は18本塁打。そして5年目から日本ハムの不動の4番に座った。

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