広島逆転優勝へ! 丸、堂林は「由宇球場」の原点に戻れるか (2ページ目)

  • 谷上史郎●取材・文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

「野手の丸(佳浩)、松山(竜平)、堂林(翔太)、梵(英心)、安部(友裕)。捕手の會澤(翼)、白濱(裕太)......。ピッチャーで言えば前田(健太)も中田(廉)もみんな思い出深いですよ」

 山口との県境に位置し、グラウンド以外はまさに何もない。かつて、ここから這い上がった金本知憲氏も「絶対戻りたくないし、やれと言われても二度とできない」と当時の思い出を語っていたが、若鯉たちにとっての鍛錬の場には「由宇ならでは」の環境もある。

「まずね、由宇はとにかくグラウンドが広いんです。広さで言えば12球団の1軍球場を合わせてもおそらくナンバーワン。この広さが1つ選手の育成にも関わってくるんです」(山崎氏)
 
 両翼100メートル、122メートルのインフィールド自体、国内最大級だが、グラウンド面積の16010平方メートルは千葉マリンや札幌ドームをも凌ぎ、12球団の保有球場としては最大。甲子園、東京ドームが13000平方メートル、マツダスタジアムが12710平方メートルと聞けばその大きさを想像できるだろうが、広大なグラウンド面積は「送球ミスなんかしたらどこまでも転がっていきますよ」と山崎氏が笑ったファウルゾーンの広さをも示している。

 実は、由宇は当初、練習場として建設された経緯があり、今も正式名称は「広島東洋カープ由宇練習場」。だからスタンドはすべて芝生席でイスはなく、相手チームのロッカーも当初はなかった。ファームとは言え、一見するとプロの施設に見えないのはそんな成り立ちからだ。ただ、練習はたっぷりできた。

「ファウルグラウンドがそれだけ広いので、普通の球場なら2カ所で行なう打撃練習がゲージを3つ置いて出来る。僕が初めてファームを見た時は3つどころか、4カ所でやろうとしたくらいです」(山崎、以下同)

 少しでも数を......という発想、気概がいかにもカープらしいが、実際、それだけ振り込む中で数々の好打者も育っていった。続けて山崎氏は、守りについても由宇で鍛えられるメリットを挙げた。

「試合で悪送球をするとテイクワンベースじゃなく、時には相手に2つ与えることになる。自然と送球に対する意識が高くなりますよね。考えすぎると投げる怖さにもつながりますが、それより意識を高く持つことで正確なスローイングが身につくメリットが大きいと思います」 

 スローイングに関しては「高校までピッチャーと聞いていたのに外野からの返球が全然だった」と苦笑いとともに思い出した丸や、同じく投手から野手へ転向した堂林に、今年は出番に恵まれないが有望株の安部......。捕球動作の基本と共に、送球の基本もみっちり特守の中で鍛え込み、のちの成長につなげていったという。

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