プロ初先発で堂々。育成・飯田優也がソフトバンクを救う (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 また、この日は7割の力で投げたという。

「リリーフで1点もやれない場面だったので、コントロールミスしないことだけを考えて投げました。先発だったらもう少し余裕がでると思いますし、腕も振れて、スピードも出ると思います」

 1カ月前まで育成選手だったとは思えないほど、堂々とした発言ぶり。「初登板は特に緊張はしなかった」とさらりと言ってのけた。

 そして飯田の最大の特長は、ただ強気に一本調子で攻めるわけでなく、クレバーさを持ち合わせていることだ。ブルペンでの調整法について、飯田は次のように語っていた。

「ブルペンでは振りかぶって投げるよりもセットポジションで投げるようにしています。試合では6~7割がセットで投げると思うので、セットで投げることを大事にしています。その他にも試合を想定して、ランナーを意識して間合いを変えたり、首を振る回数を変えたりしています」

 飯田の話を聞いて思い出したのが、北京五輪で金メダルを獲得したソフトボールの上野由岐子から聞いた言葉だった。

「私はマウンドに上がる前、この回は打者5人と対戦するんだと思っているんです。『3人で片付けないと』と考えるとしんどくなる。投手の仕事は失点をしないこと。たとえランナーを出したとしてもホームにさえ還さなければいいんです。だから、フォアボールだって怖がらない。ふたりの打者にフォアボールを出しても、あとの打者を抑えればいいんです」

 よく若手の投手のコメントで耳にするのが、「とにかく抑えたい」「腕を振るだけ」のふたつ。しかし、現実的にノーヒットを続けることなど難しいし、ピンチの時こそいかにして普段通りの投球ができるのかが成功へのカギとなる。飯田のブルペンでの話を聞いた時、成功のヒントが隠されているような気がした。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る