12球団最強。ヤクルト打線を変貌させた「秘密練習」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 室内練習場のティーバッティングスペースには、連日、6人から7人の選手がバットを持ってやってくる。そして、様々なスタイルで特別なティーバッティングに励んでいる。

「低め、高めの打ち方、インサイドの打ち方、変化球の打ち方、フォークボールの打ち方、インパクトを強くする打ち方……メニューは他にもいろいろあります。本来、ティーバッティングは単純な反復練習でしょ。好きな選手はあまりいないと思うんだけど、結果が出ていますからね。選手たちは一生懸命やっていますよ」

 また、選手たちは与えられたメニューをただ消化するだけではないという。

「選手それぞれが明確な目的意識を持って練習に取り組んでいます。畠山だったら『今日のピッチャーは高めの速い球を投げてきます。バットを高い位置で振っておきたいので、それ用のトスでお願いします』とかね」

―― 先程、フォークボールの打ち方と言われていましたが、そんなことができるのですか。

「フォークボールは、試合で手を出さなければ練習の必要はないんです。ボール球だから。でも、みんな手を出してしまう(笑)。じゃあ、低めのボールを打つ練習をしようと。内容的には低めにトスしたり、ワンバウンドの球を打たせたり。それで、どうすればヒットになるのかといえば、フォークの軌道に対して、下からバットを出してセンター方向に打ち返すんです。ただボールの軌道を追いかけて打ちにいったら、全部ゴロになってしまう。ちゃんと説明してあげれば、選手も納得して練習できます。大事なことは、練習の目的を明確にすることなんですよ」

―― この他にも、真横(=体の正面方向)からトスを上げるのはどんな効果が?

「ボールを払う感覚、体の正面で打つ感覚、インサイド球に対してヒジを抜いて打つ感覚。この3つを練習することができます。体の正面で打つ感覚を養う時は緩いボールを投げる。逆にヒジを抜いて打つ感覚を練習する時は、インサイドに速い球を上げます。先程も言いましたが、バッティングはタイミングとポイントとバットの軌道。その中で、特に右バッターの場合はボールを呼び込んで逆方向に打てないと一軍では使えない。落ちるボールが非常に多い時代なので、しっかりポイントに呼び込んで逆方向に打たないとヒットになりません」

 後日、早出練習を見に行くと、真中コーチはショートのピッチャーを担当し、杉村コーチは荒木、山田、畠山、比屋根渉を相手にトスを上げていた。

「バッターはバットを振らないことには始まりません。バットを振って汗をかく。それがいちばんの薬じゃないですか」(杉村コーチ)

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