二刀流・大谷翔平、2年目はここが違う (3ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

◎山村宏樹(元阪神、近鉄、楽天)

 昨年初めてプロの世界を経験して、自分に何が足りないのかわかったと思うんです。その足りなかった部分が、今年は見事にクリアできています。たとえば、けん制やクイックなど、ピッチング以外の部分で成長のあとを感じます。昨年はランナーを出すと必要以上に気にしてしまい、制球を乱すことがありました。おそらく、けん制やクイックに自信がなかったのでしょう。でも今年は、けん制がうまくなり、クイックもできるようになっている。ランナーを釘付けできるようになり、打者との対決に集中できています。それが好結果につながっていると思います。しっかりと課題と向き合い、そして克服していく。あらためて、彼の対応力の高さに驚かされましたね。

◎与田剛(第2回、3回WBC日本代表投手コーチ)

 ストレートの質が昨年とまったく違います。わかりやすく言えば、同じ150キロのストレートでも、昨年は150キロの腕の振り、体の使い方をしていましたが、今年はゆったりしたフォームからピュッと来るイメージです。打者にしてみれば、タイミングが取りづらく、スピードも速く感じていると思います。実際、大谷のストレートに振り遅れている打者は多い。ボールにキレがある証拠です。

 それにストレートが良くなれば、変化球も生きてきます。打者はその投手のいちばん速い球に合わせてタイミングを取るのですが、今年の大谷はスピードがあるため、早めに始動しないと間に合いません。ただ、早めにタイミングを取るということは、ボールを見極める時間が短くなり、ボール球に手を出す確率が上がってしまう。大谷にしてみれば、昨年よりも楽なピッチングができていると思います。

 もちろん、まだ課題はありますが、着実に進歩していることは間違いありません。それに今のプロ野球で常時150キロを投げられるピッチャーはほとんどいません。大谷はそれができる上に、はっきり言って、まだポテンシャルの底が見えない。この先、とんでもないピッチャーになる可能性は大いにあると思います。

 今回、7人の解説者全員が投打で大谷の成長を認めていた。昨年の今頃は、「二刀流は止めた方がいい」「どちらかに絞るべきだ」という声もあったが、底知れぬ才能を見せつける大谷にプロのOBたちも夢を見はじめてきたのかもしれない。はたして、この夢はどこまで広がるのだろうか。二刀流挑戦の夢はまだ終わらない。

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