今、松井裕樹に伝えたい「チェンジアップ多投の危険性」 (2ページ目)

  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

 実際、ここまでの3試合を見ても、チェンジアップで空振りを取れていますし、今の彼にとっては生命線といえるボールかもしれません。しかし、チェンジアップは低めに投げないといけないボールです。ただ、低めに投げようと意識すればするほど、体が突っ込んでしまい、開きも早くなってしまうんです。それが、今の彼を苦しめている最大の原因だと思います。

 特に序盤からチェンジアップを多投すると、フォームのバランスを崩してしまい、ストレートの制球が乱れてしまいます。そしてストレートでストライクが取れないとなると、どうしても変化球中心になってしまいます。松井の場合、変化球はチェンジアップとスライダーだけですので、打者からすれば絞りやすい。その悪循環を繰り返しているように思えてなりません。

 とにかく序盤は、思い切り腕を振って、打たれてもいいのでストレート中心の配球でいくべきです。キャンプ、オープン戦で松井のストレートを見ましたが、じつに素晴らしいボールでした。わかっていても、そう簡単に打てるようなボールではありません。ランナーを背負いたくない、バットに当てられたくないという気持ちが働いて、チェンジアップに頼ってしまっていると思うのですが、今の松井に必要なことは長いイニングを投げて、経験を積むことです。

 ストレートを思い通りにコントロールできれば、チェンジアップもスライダーもいま以上に生きてくると思いますし、もっと球数を減らすこともできる。

 今シーズンのダルビッシュ有(レンジャース)を見ると、フォーシームのストレート中心のピッチングになっています。ダルビッシュもメジャーに行った頃は、ツーシームやカッターなど、多彩な変化球を駆使していましたが、3年目の今年はじつにシンプルな配球です。おそらく、ストレートがもっとも有効な球だと気づいたのでしょう。

 松井もあれだけのストレートを投げられるピッチャーですので、もっと自信をもって、磨いていってほしいと思います。高卒1年目の投手がローテーションに入るだけでもすごいことなんです。だからこそ結果は気にせずに、自分のピッチングに徹してほしいですね。

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