2014.02.28

「パ・リーグのエースに最も近い男」。オリックス金子千尋の誓い

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 ここにふたつの成績がある。

1.登板数28/投球回数212/奪三振183/完投8
2.登板数29/投球回数223回1/3/奪三振200/完投10

 1は昨年、楽天の田中将大(現ヤンキース)が残した成績で、2はオリックス金子千尋のものだ。これを見る限り、どちらも甲乙つけがたい数字だ。しかし、それぞれの勝敗(勝率)、防御率を加えると、印象は少し変わってくる。

昨シーズン、12球団で唯一、沢村賞の選考基準をすべてクリアした金子千尋。

田中将大=24勝0敗(勝率1.000)/防御率1.27
金子千尋=15勝8敗(勝率.652)/防御率2.01

 確かに、前人未踏の24連勝をマークし、防御率1点台を記録した田中のピッチングは、投手の最高栄誉である沢村賞に満場一致で選出されるほど、強烈なインパクトを残した。だが金子も、勝敗、防御率こそ田中に及ばなかったものの、12球団で唯一、沢村賞の選考基準(登板25試合、200投球回、15勝、完投10、150奪三振、勝率6割以上、防御率2.50以下)を全項目でクリア。その内容は、田中に勝るとも劣らない素晴らしいものだった。

 金子のどこが凄いのか――かつて西武に在籍していた中島裕之(現アスレチックス)は、「いくつもの変化球を投げますけど、全球が勝負球になるレベル。プロでもそんなピッチャーはめったにいない。それぐらい凄い投手」と話していた。

 また、金子の社会人時代を知る元オリックススカウトの谷村智啓氏が、「タテの大きなカーブと回転のいい真っすぐ。右の星野伸之のタイプ」とかつて語っていたことがあったように、大きくタテに割れるカーブは独特の軌道を描く。さらにプロ入り後は、そのカーブに磨きをかけるとともに、シュート、スライダー、カットボール、チェンジアップ、スプリットと、実に多くの変化球をマスターし、オリックスのエースへと上り詰めた。