山﨑武司×中村剛也が語る「ホームランアーチストのプライド」

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 阿部卓功●写真 photo by Abe Takanori

山﨑武司×中村剛也 新春対談(2)

2009年に本塁打王のタイトルを争った中村剛也選手(写真左)と山﨑武司氏。2009年に本塁打王のタイトルを争った中村剛也選手(写真左)と山﨑武司氏。

―― ホームランバッターの価値とは何でしょうか?

山﨑 どんな状況であっても、オーバーフェンスするのがホームランバッター。僕たちに求められているのはチャンスメイクではなく点を取ることですから。極端な話、ランナーなしでヒット打っても「何だそりゃ」ぐらいに思ってやらなければいけないんです。いくら打率が高くても得点圏打率と打点が低ければ存在意義はないし、4打数1安打でもチームの勝利に貢献する一打を放てればそれでいい。

中村 同感ですね。

山﨑 ホームランはゲームの空気を一瞬にして変えることができる特効薬だし、その立場を担えるのは球界に数人しかいない。

中村 よく僕はソロホームランが多いと非難されることがあるんですけど、「1点は1点だろ」って思うし、それが決勝点になることもある。だからツーアウトランナーなしだったらどんなに点差が離れていようがホームランを狙いますね。

山﨑 狙いに行って許されるのがホームランバッター。こう言っては何だけど、観客は完封勝利を見に野球場に来ているわけじゃない。一番見たいのはホームラン。そういう意味では何度もファンを喜ばすことができるから優越感のある仕事だった。

―― 山﨑さんは1996年と2007年にホームラン王に輝きました。1回目のタイトルから10年以上経っていますが、ふたつのタイトルに違いはありますか?

山﨑 技術的なことを言えば、若いときは自分からボールに向かっていく"衝突打ち"で、近年はボールを呼び込む打ち方。単純に前で打つか、後ろで打つかのように思うかもしれませんが、自分からボールを捕まえにいくよりも待って打った方が確率は上がる。若いときは本能任せだったけど、晩年は野村(克也)監督にお会いしたことで配球を読むようになったし、結果的にスイングも変わりました。

中村 僕はよくホームランを打つコツを聞かれるんですけど、自分の中ではバットとボールが長いことくっついているようなイメージで振っているんです。フォームも感覚的なものなのであまり気にしません。体調は毎日違いますし、その日いちばん楽なところで構えるようにしています。

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