西武ライオンズ、「大阪桐蔭クリーンアップトリオ」の夢 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 そんなことを考えていると、実現した時の並びまで想像したくなる。コンディションも含め完全復調となれば、中村が4番に座り、その前後を3番・森、5番・浅村が固めるのが自然だろう。ただ、3人の持つ力、本来のタイプを考えれば、いかようにも組み合わせが広がってくるからまた面白い。

 例えば中村は、これまで本塁打王を4回獲得したように、最も4番らしい打者と言える。ただ、2年程前に西谷監督からこんな話を聞いたことがあった。

「高校時代の中村は、打率も高く、それでいてホームランも打てる。とにかく空振りをしない打者でした。プロに進んでからは、一発を求められることが多くなったのか、本来のスタイルではないバッティングになっている気がします。それでも期待通りホームランを打てるのはさすがですが、僕は本来のスタイルに戻せば、三冠王も夢じゃないと思っています」

 高校通算83本塁打を放ち、「ナニワのカブレラ」と騒がれた中村だったが、本来は穴が少なく、ボールを捉える能力に長(た)け、それでいて一発が打てるタイプ。今は一発が代名詞のようになっているが、今よりも確実性や勝負強さが増すと、3番や5番のイメージにはまるバッティングが見られるかもしれない。

 今季、ケガで出遅れた中村の代わりに西武の4番に抜擢されたのが浅村だった。持ち味の積極性と勝負強さを発揮して打点王を獲得するなど、4番として十分な結果を残した浅村だが、本来のタイプからすると3番が似合う。だが、入団してから1番から9番まですべての打順を経験し、その都度、チームの求めに対応し、スケールアップしてきた浅村。今やクリーンアップのどこに入っても違和感がない、稀(まれ)な選手といえる。

 そして森だが、先述したようにミート力は折り紙つきで、4度出場した甲子園での通算成績は、打率.473、5本塁打、11打点。さらに、西谷監督が「本人がホームラン(高校通算41本塁打)にこだわっていたらもっと増えたはず」と語るように、長打力も一級品。森自身は、「プロには飛ばす人がいくらでもいると思うので、自分はアベレージにこだわっていきたい」と話しているが、出色のスイングスピードに大きなフォロースルーは、アーチストとしての資質も秘める。現状のバッティングを見れば、高校3年の時に打っていた3番がはまりそうだが、将来的に4番ということも十分にあるかもしれない。

 まさに三者三様の実力、適性、そして可能性を秘める中村、浅村、森。ドラフト後、3人でクリーンアップを形成する夢を問われた中村は「そういうことになって、見ている人に楽しんでもらえたらいい」と語ったという。「なんで大阪桐蔭の3人が西武でクリーンアップを組んでるんや!」と、ナニワのファンのボヤキが聞こえてきそうだが、「夢の大阪桐蔭クリーンアップ」の可能性は高い。

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