原監督の1年。巨人独走を実現した「3つの采配」 (2ページ目)

  • text by Sportiva
  • photo by Masuda Yuichi

 新人の菅野智之こそ13勝を挙げて活躍したものの、WBC開催の影響か、侍ジャパンのメンバーに選ばれた内海哲也(13勝/昨年15勝)、杉内俊哉(11勝/昨年12勝)、澤村拓一(4勝/昨年10勝)は、昨季よりも成績を落とした。特に澤村は、3年連続ふた桁勝利を逃して、シーズン終盤には中継ぎに配置転換されるほど低迷した。

 加えて、今季の飛躍を期待して開幕投手に指名された、3年目右腕の宮國椋丞(みやぐに・りょうすけ)も、不振で3度離脱。6勝7敗と望んだほどの成績は残せなかった。

「今年は若い力が伸びてくると期待していたけど、なかなか伸びてこなかった。育とうとはしているけど、うまくいかない。この辺は簡単ではないと改めて思わされた」と、原監督は計算どおりに運ばぬチーム作りの苦悩を吐露した。

 野手陣も同様だった。昨年、そろって最多安打のタイトルを獲得した、長野久義を1番に、坂本勇人を3番に据えたが、ふたりとも好不調の波が激しく、打線を何度も大幅に入れ替えた。

「得点圏打率が低かったりして、なり(固定メンバー)で任せられるチームではなかった。目を離すとどこかに飛んで行っちゃうようなチームだった」(原監督)

 シーズンが進むにつれ、「途上のチーム」という言葉が口を突いた。洗練され、完成型に近づいていくはずの今年のチームは、思惑とは外れた方向に進んでいたのだ。

 さらに、忘れている人もいるかもしれないが、5月には長嶋茂雄氏と松井秀喜氏の国民栄誉賞授与式(5日)が行なわれ、その話題に付随して「次期監督は松井」と明言していた渡邉恒雄球団会長の発言がクローズアップ。現監督にとっては、決して愉快ではない後任監督の話題が、シーズン中にもかかわらず新聞紙上を賑わせた。

 この一連の騒動において、原監督はコメントを発していないが、心中穏やかではなかっただろう。事実、国民栄誉賞授与式が行なわれた翌日から、チームは4連敗。以降の1カ月(5月6日~6月5日)は、9勝13敗1分けと振るわなかった。

 しかし、そんな数々の誤算を補ったのも、結局は信念と経験に裏づけられた原監督自身の手腕だった。

「監督の仕事は、選手が困っているなというときに助ける、背中を押すこと」

 チームが滞(とどこお)り気味のときにこそ、原監督は思い切って動く。用兵面での最大の決断は、3番阿部慎之助、4番村田修一とした新打線だった。

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