斎藤佑樹、嬉しくなかった登板で得た最大の収穫 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 キレのあるボールも、正確なコントロールも、それを生み出すフォームを完成させることも、すべては右肩への不安を拭い去ってからの話だと考えれば、この夜、斎藤は確かにスタートラインに立てた。斎藤は試合後、こう話した。

「今日の登板がすべてはないと思っています。投げてみないとわからないこと、投げてみて課題が見えてくることもあります。今の僕の状態が今日ですから、これからもっとよくなるように、違う意味でのスタートを切りたいと思っています」

 栗山監督もこう話していた。

「肩に負担の掛からない投げ方っていうのは、バッターからするとタイミングを合わせやすかったり、自分の投げ方と違っちゃってうまく投げられなくなることもあるんだけど、そこはもともと持っている自分のタイミングを残しながらのフォームだったし、これなら今後は勝てるピッチングのことだけを考えてよさそうだなと、こっちに思わせてくれたことが嬉しかったかな」

 また、栗山監督が「(中嶋なら)余計なことを考える前にボールを返して投げさせるとか、ここでカーブを投げると体重移動がしやすくなるとかの見極めができるから、頭から行ってもらった」と起用の意図を説明したベテランのキャッチャー・中嶋聡は、斎藤のボールを受けた印象をこう話した。

「今の時点でどのくらいなのかなと、オレも探りながら行ったんだけど、いい面も悪い面もどっちもあったかな。強い真っすぐと、ツーシーム、カットをしっかり投げられていたのは、いいところ。ただ、ベースを半分に割って、こっち側(右打者のインコース)には強いボールが来るけど、反対側は弱いというのが気になったね。肩をケガしたピッチャーはどうしても怖がるから、右バッターのインコースへは腕を強めに振っても大丈夫なんだけど、アウトコースへは振り切れない。これから肩への不安がなくなって、腕を振ることへの怖さがなくなったら、戻ってくるんじゃないかな。今日の場合は対打者ではなく、まずは投げられるかという話。オレからすれば、バッターのタイミングを微妙に狂わせたりしてたし、さすがの技術は持っているなと思ったよ」

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